●ついに決勝戦。退屈な試合になるかもしれないと恐れていたが、こまったくの杞憂だった。スペインは結局「ノートップ」システムを貫徹、セスクの「偽9番」。GK:カシージャス-DF:アルベロア、ピケ、セルヒオ・ラモス、ジョルディ・アルバ-MF:シャビ・アロンソ、セルヒオ・ブスケツ、シャビ-FW:シルバ、セスク・ファブレガス、イニエスタ。一方のイタリアは内容のよかった準決勝の4-4-2を踏襲、悪悪ツートップ。GK:ブッフォン-DF:アバテ、バルザーリ、ボヌッチ、キエッリーニ-MF:ピルロ、マルキジオ、モントリーヴォ、デ・ロッシ-FW:バロテッリ、カッサーノ。
●序盤からコンディションの差は明らかで、有利な日程のスペインがボールを回す展開。しかもこれまでと違ってゴールに向かうパスが多く、この大会初めてといっていいくらいのスペクタクルにあふれたスペイン。早くも14分にイニエスタのスルーパスに飛び出たセスクが深い位置からマイナスのクロス、これがビタッとシルバの頭に合ってゴール(シルバのヘディングとは!)。前半からスペインのパス回しに「オーレ!オーーーーレ!」が出てたし。イタリアは長いパス一本でもバロテッリやカッサーノが前を向ければ何かを起こせそうではあったが……。41分、後方からゴール前へと猛然と走りこんだジョルディ・アルバに対して、シャビがレーザービームみたいなスルーパスを通して(あそこに通るの!?)、落ち着いて一対一を決めて2-0。
●イタリアはあまりにも不運。前半にキエッリーニが負傷交代、後半頭にカッサーノをディ・ナターレに交代、で、後半モントリーヴォに代えてモッタを投入したら、そのモッタが5分で負傷。接触ではなく筋肉系のトラブルのようで、これはもうどうしようもない。交代カードがないので、その後10人で戦うことになった。こうなるとあとは耐えるだけ。スペインは容赦なく攻めて、84分にシャビのスルーパスから途中出場したフェルナンド・トーレスが、さらに88分にはフェルナンド・トーレスのアシストで(自分でも打てたみたいだがプレゼント)交代して入ったばかりのマタがゴールを決めて4-0。イタリアが10人になった時点で、あとはスペインの美しいゴールを見る以外に試合の楽しみはなくなっていたので、その意味ではスペインは大会を盛り上げてくれたともいえる。決勝で4-0なんて、まず見る機会はないから。
●モッタはバルセロナ育ちの選手なんすよね。もともとブラジル人だし、この対戦だと「どうしてイタリアのほうにいるの?」みたいな不思議な感じがするんだけど、彼の負傷はあまりにも気の毒。イタリアに唯一幸運があったのはペナルティエリア内でのボヌッチの退場級ハンドを見逃してもらったことだけ。
●試合後のスタッツを見るとポゼッションがスペイン51対イタリア49でほぼフィフティ・フィフティになっていて、あまりに実感と異なるので驚く。まちがってない?
●スペインはこれでEURO2008、ワールドカップ2010、EURO2012と大会3連覇。かつてこんなに勝ち続けた代表チームは見たことがない。試合後のセレモニーがよかった。トロフィーをみんなで掲げて、セルヒオ・ラモスが亡き親プエルタのTシャツを着たり、選手の子供たちがピッチに入ってきて散っている紙ふぶきで遊んだり、父親といっしょに記念撮影したり……。なんだか泣ける。敗者とのコントラストも鮮やか。不満げな表情のバロテッリ、疲れ切って一段と皺が深くなっているピルロ、号泣するボヌッチ、プラティニと笑顔で握手をしてなんとなくさばさばして見えるブランデッリ監督。最後にスペインが持ち味を発揮してくれたので、大会の印象はずいぶんよくなった。決勝はシャビ、大会を通じてはイニエスタがすばらしかった。
July 2, 2012