●9月に入ってコンサート・シーズン開幕。1日は東京オペラシティで「フェデリコ・モンポウ/インプロペリア」へ。なんと、モンポウの音楽だけで3時間15分という大プログラム。こんな機会、二度となさそう。出演者陣もぜいたく。モンポウというとピアノ曲の作曲家というイメージだが、この日はギターからオケ&合唱まで、モンポウのさまざまな顔を見せてもらった。村治佳織さんのギター・ソロからはじまり、第1部、第2部、第3部と先に進むにしたがって編成が大きくなっていく趣向。最初は大ホールにモンポウのひそやかな音楽が淡々と紡ぎだされていたのが、どんどんと音楽的なジェスチャーが大きくなり、やがて「え、これがモンポウ?」という驚きへ。
●やはりオーケストラが入る第3部が圧巻。アントニ・ロス・マルバ指揮東京フィルで3曲演奏されたが、全部編曲者が異なる。1曲目「郊外」より「街道、ギター弾き、老いぼれ馬」はロザンタールの編曲。ロザンタールは以前この欄で彼の著書「ラヴェル その素顔と音楽論」を紹介したことがあったけど、華やかで効果的なオーケストレーションを施していて、モンポウの原曲とは相当遠い雰囲気の外向きの音楽になっていたのがおもしろい。2曲目は指揮のロス・マルバ編曲「夢のたたかい」(ソプラノ:幸田浩子)。モンポウへのリスペクトが感じられる節度のあるオーケストレーション。3曲目は、なんとマルケヴィッチ編曲のオラトリオ風作品「インプロペリア」日本初演(バリトン:与那城敬、新国立劇場合唱団)。この曲も知らなかったし、マルケヴィッチの名前がこんなところで出てくるのも驚きだが(今年生誕100年すよね、マルケヴィッチ)、モンポウにこんなに強靭峻烈な曲があったとは。この曲だけはもともとモンポウ自身がオーケストラ作品として書いたものであるが、作曲者了解のもとマルケヴィッチがオーケストレーションに手を入れたのだとか。20世紀の宗教音楽の名曲として、レパートリー化されてもおかしくないんじゃないか。
September 3, 2012