●演奏会が少なくなる時期にまとめて見ようと、夏の初めにベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホールをしばらくぶりに契約したものの、思ったほどには見られず。映像があると気軽というわけにもいかず、それにオケの公演は大曲がずらっと並ぶということもあり。
●とりあえず、見たものについて、自分用メモ。ブロムシュテット指揮のベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」。爺成分ゼロ、若々しく清新な音楽、菜食主義のおかげ? ブロムシュテットは毎年ベルリン・フィル定期に招かれる数少ない指揮者の一人。そして毎回のように一般参賀あり、今回も。
●名前が覚えられない指揮者ナンバーワン、ヤニク・ネゼ=セガン。坊主頭になっていた。チャイコフスキー「ロメオとジュリエット」とラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲。これらに先立ち、クラリネットのヴァルター・ザイファルトが一人舞台にあらわれてベリオのセクエンツァIXaを演奏した。昨シーズンはベリオがテーマ作曲家になっていたので、いくつかの公演で、オケの奏者がセクエンツァを独奏している。さすがベルリン・フィルというか。オケの演奏会だからといって、オーケストラ曲だけしかやっていけない道理はない。ベルリン・フィルではしばしば指揮者よりもオケの企画性が前面に出る。ネゼ=セガンの一般参賀あり。しかしこれは合唱団員の退場で拍手が長引いたせいもあるのでは。
●ルイゾッティ。この人も若くしてどんどんと偉くなって、ベルリン・フィル定期に再度登場。オケの定期なのにパユのソロが2曲もあって、ドビュッシーの「シランクス」とベリオ「セクエンツァ」。パユ、すごすぎ。ルイゾッティ、熱血のプーランク「グローリア」。メインはプロコフィエフの交響曲第5番。ルイゾッティは文字通りの意味でも音楽的にも表情豊か。コンマスにブラウンシュタイン、トップサイドにスタブラヴァ。終演後、オケに向かってこんなにパチパチと手を叩く指揮者はいない。
●ソヒエフ指揮、ベレゾフスキー独奏。ルーセル「バッカスとアリアドネ」に続いて、リストのピアノ協奏曲第1番。緊張して真剣に鍵盤に向き合うベレゾフスキー! 切れ味鋭く、剛腕ぶりもさすが。オケへの気遣いも感じさせて、らしからぬおとなしさ、LFJとは別人のよう……。アンコールにしっとりとアルベニス「二調のタンゴ」。ヴィオラ首席のアミハイ・グロシュがベリオのセクエンツァVI。強烈。メインはラフマニノフのシンフォニック・ダンス。以前ラトルの指揮でも映像を見た曲でもあるが、ソヒエフはとても明るい響きを引き出して、楽しく聴かせてくれた。この曲、見直したかも。しかしスーパー・オケでないとおもしろく聴ける自信なし。
●ビシュコフはベリオ「レンダリング」。シューベルトとベリオの接ぎ木のような曲なのに、もはや確固としたマスターピース然として響く。セクエンツァVIIをマイヤーの独奏で。最後はなぜかウォルトン。
●ティーレマンは二公演。一つはメシアン、ドビュッシー、チャイコフスキー「悲愴」という、らしくないプロ。どじょうすくいスタイルの棒が合わせにくそうだし、合っていないと思うが、巨大な音楽を作り出して盛大な一般参賀。むむ。もう一公演はマイヤーのソロでR・シュトラウスのオーボエ協奏曲、ブルックナー「ロマンティック」の得意のプロ。マイヤー見事。ティーレマンの顔芸怖い。指揮姿はヘンすぎるけど、「ロマンティック」は真に感動的な音楽。なんとブルックナーの音楽はすばらしいのかと圧倒される。一般参賀あり。
●ドゥダメルは「マ・メール・ロワ」、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲(カヴァコス)、R・シュトラウス「ツァラトゥストラはかく」。熱いというか、暑苦しい「ツァラ」。一般参賀あり。ドゥダメルは以前も思ったけど、今ひとつこのDCHでは彼のオーラが伝わってこない気がして隔靴掻痒感も。
September 11, 2012