●17日(月)は東京文化会館で二期会のワーグナー「パルジファル」。クラウス・グート演出。話題の公演を最終日にようやく。
●ピットには飯守泰次郎指揮読響。期待以上のすばらしさで、深々としたワーグナーの響きに浸り切る5時間。起伏に富み、情感豊か。このままのコンビで新国のピットに入ってみては。
●で、クラウス・グート演出。上下2階建ての回り舞台を最大限に活用して、あらゆる場面をこの舞台上で表現していて、時折映像を投射してこれを補う。「パルジファル」なんて劇中のストーリーなんてないも同然だし(話の半分以上は幕が開ける前史で済んでる)、舞台なんて添え物みたいなものと思いきや、盛りだくさんの意匠が込められていて一回じゃ消化しきれないくらいの密度の濃さ。演出家の言葉にあるように、物語の始まりは1914年に設定される。なにも知らずに見れば最後は唖然とするのでは。なにしろパルジファルが軍服を着て独裁的権力を手にして終わるのだから。
●しかし演出家ノートは脇に置いて、見たものを見ねば、オペラは。この「パルジファル」って簒奪者の物語だったんすよね。素朴な若者が、知恵を付け聖杯と権力を王から奪う。軍服を着たパルジファルを支配者にすすんで戴くあの騎士たちと来たら。「善行を積む」とか「聖戦をする」とか声高に言ってる人々がろくな行いをするわけはないのであって、イノセンスに重きを置いた閉鎖社会の行方はああなるしかない。この演出じゃなくたって、「パルジファル」に出てくるモンサルヴァート城の連中ってみんな狂信者たちじゃないすか、ひとたび中世を離れて20世紀以降の視点で見れば。だからこれは納得の結末。
●あんな息苦しいところにいて、ひとりで責務ばかり負わされていたら、どんな薬草があっても傷なんて治るわけない。クリングゾル側のほうがどう見ても風通しがよさそう。花の乙女たちが盆踊りしてくれそうだし(あの赤いのってちょうちん?笑)。
September 18, 2012