●ニッポン代表が日本でワールドカップ予選を戦うときは、その直前に一試合親善試合を組んで調整する(協会にとっては資金集めでもあるはず)。同じようにフランスも試合を組んだわけだ。相手はニッポン。ニッポンにとっては、本物のアウェイで強豪国と戦えるまたとないチャンス。そして今や日本より欧州で試合をするほうが、選手たちが長距離移動しなくて済むという恐るべき現実。先発の大半が欧州組になってしまった。
●で、サンドゥニでのフランス戦といえば、思い出すのは11年前の屈辱。あれは親善試合じゃなくて、コンフェデ杯だから公式戦だったんすよね。代表にとって後にも先にもあれほど惨めな試合はなかったと思う。0-5という大差も屈辱ながら、中田ヒデ以外はだれもボールを持てない、まるで大人と子供の試合みたいで、ホントに恥ずかしかった。雨で下が濡れてて、みんな足元が踏んばれなくてボールを失ってしまうのに、ナカタだけが唯一相手と同レベルのプレイをしていた。
●で、今回のフランスvsニッポン。前半は11年前の再現になってもおかしくないくらい、一方的な展開だった。手も足も出ない。ひたすら相手の攻撃を耐え続けた。ところが後半、相手が大きくメンバーを入れ替えると、ニッポンも徐々にチャンスを作れるようになり、前線でボールが回りだした。香川は相手のプレッシャーを受けてもボールを失わず、頼もしい限り。長友は後半からサイドを何度も突破して気持ちよいくらい。後半43分に、フランスのコーナーキックから、どカウンターが発動、なんと今野がドリブルで独走し、右サイドを駆け上がった長友に見事なスルーパス、そして長友のクロスを香川が蹴り込んでニッポンがゴール! これが決勝点となって、強豪相手に歴史的な勝利を収めることになった。
●おっと選手の名前。GK:川島-DF:酒井(→内田)、吉田、今野、長友-MF:遠藤、中村憲剛(→乾)、長谷部(→細貝)-FW:香川、清武、ハーフナー・マイク(→高橋秀人)。本田はケガでベンチ。前田もケガで帰国。中村憲剛とハーフナー・マイクの代役はどうかと思ったが、結果を出したのは立派。
●とはいえ、実力差は明白。この種の親善試合は本当に試合になるのは前半まで。後半は(本番の試合にそなえて)選手を入れ替えてテスト・モードになる。フランスはどんどん入れ替えたけど、ニッポンは後半頭の選手交代なしで、続けて「試合」をさせてもらった。ベストメンバーの強豪国とアウェイで戦うと前半みたいになるが、選手を入れ替えてチームの完成度が一段下がると、たとえアウェイでもニッポンは勝つこともできるのだ、という力関係がはっきりしたというべきか。11年前は箸にも棒にもかからなかったのが、今はこんな風に相手との距離を図れるところまで近づいたのだと思うと感慨深い。
●フランスは前半、サイドバックのドビュッシーの攻め上がりが効いていた。たゆたうような夢幻的な攻め上がりから、形式にとらわれない動的で柔軟なクロスを繰り出し、ピッチ上に繊細なテクスチャーを描いていた。
October 14, 2012