October 15, 2012

マゼール&N響定期Aプロ

●時の流れが止まっているかのように老いを感じさせない人がまれにいるけど、この人もその一人かも。13日夜、マゼール&N響へ(NHKホール)。定期公演Aプロ。とても82歳とは思えない。といっても、さすがにフィジカルには老いている。今回歩く姿に初めてそれを感じたけど、それでも姿勢をまっすぐに保って毅然としてオーラを発しながら、精神の溌剌さを棒に託しているのがスゴい。下向きに握った指揮棒を細かく振る姿は健在で、N響からまぎれもないマゼール・サウンドを引き出していた。キリッとアンシャープ・マスクをかけてさらに彩度30%増にしたみたいな鮮やかな響き。
●チャイコフスキーの組曲第3番って40分くらいあるんすよね。交響曲並みの長さなのに、中身は組曲。これが退屈せずに聴けるという喜び。休憩後にライナー・キュッヒルがソロをつとめたグラズノフのヴァイオリン協奏曲、そしてスクリャービンの「法悦の詩」。妖しさ全開。多くのマゼール・ファンが期待する意表をついたヘンタイ・ルバートはなかったかもしれないんだけど、曲がもともと怪異なので無問題。終演後は盛大なブラボー。一曲目のチャイコフスキーの組曲からブラボーが出てたくらいで、どれだけ期待された客演だったがよくわかる。老巨匠から拝聴するありがた~い音楽っていうんじゃなくて、サービス満点のエンタテインメント性がすばらしい。ぜんぜん枯れてないし。N響初登場だったとは。この後のCプロ、Bプロも盛り上がりそう。

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