●25日はナクソス創業25周年記者懇談会&パーティーへ(渋谷・セルリアンタワー東急ホテル)。25周年を機にナクソスのビジネス戦略について、クラウス・ハイマン経営最高責任者が欧州、米国各地に続いて東京でも会見を行なうというツアーの一環として、記者懇談会が開かれた。
●まずハイマン氏からは現状のナクソスのビジネスの全貌について、一通りの案内があった。ナクソスは相変わらず多数のタイトルのレコーディングを行なう活発なレコード会社ではあるけど、それ以上にNMLをはじめとする音楽配信のプラットフォームを担うIT企業でもあり、また他のレーベル(時にはメジャーを含む)の商品のロジスティックスやディストリビューションを担う流通企業でもありと、ユニークで多角的な企業に成長しているということが改めて感じられた。ウェブサービスのメンテナンスやメタデータの作成をする部門は以前は香港にあったけど現在はマニラに置いてるとか(メタデータの作成に音楽学者も雇ってるんだとか)、米ナッシュヴィルに12名のIT部隊を置いて開発をやってるとか、音楽CDのリリースは香港とロンドンで14名でやってるとか。ナクソスの企業カルチャー同様、会見の雰囲気も「レコード会社」というのとはぜんぜん違うイメージ。
●会見後の質問で、NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)について「先般ワーナーミュージックが参加したが、他のメジャー、ユニバーサルやソニーも参加する可能性はあるのか。またEMIはすでに海外版NMLでは参加しているのに、日本国内のNMLからは聴けない。この状況は今後解決されるのか」と尋ねたところ、ハイマン氏は「ユニバーサルとソニーは今後6ヶ月以内に参加するだろうと展望している。EMIは日本市場に限って条件面で合意できていないが、しかしインターナショナルな販売からはEMIは満足していると伝えられているので、今後状況は改善されていくのではないか」という返答だった。前者は具体的な展望、後者は目標といったところか。
●他に印象に残ったのは音質面かな。配信の音質向上については「WAVファイルはすでにあるので、配信しようと思えば可能。回線コストが折り合えば。ダウンロード販売のClassicsOnlineではすでにFLAC配信も始めている」と。基本的に、需要があってなおかつコストが折り合えばやるし、そうじゃなきゃやらないと明快なんすよね、ハイマン氏は。ちなみに、NMLを利用する米国の教育機関は64kbpsで契約するところが大半で、128kbpsを選ぶのは非常に少数なんだとか。
●もともとNMLは教育機関、図書館、音楽団体、音楽家向けにデザインされているサービスなんだけど、日本では例外的に大勢の個人ユーザーが利用しているわけで(と以前の取材でうかがった)、四大メジャー全部が聴けるようになったらますますその傾向は強まるかも。
●最後にもう一つメモ。NAXOSレーベルの米国でのフィジカル(CDなどパッケージ商品)対デジタルの販売比率は昨年が50対50。今年は40対60でデジタルが優勢。ハイマン氏の予想では5年後には25対75くらいになるんじゃないか、と。
October 26, 2012