October 29, 2012

尾高忠明指揮東響のウォルトン「ベルシャザールの饗宴」

●28日は尾高忠明指揮東京交響楽団へ(サントリーホール)。ローマン・トレーケル(バリトン)と東響コーラスを迎えて、武満徹「波の盆」、マーラー「リュッケルト・リーダー」、ウォルトンのオラトリオ「ベルシャザールの饗宴」という魅力的なプログラム。
●前半武満徹「波の盆」は日テレの同名テレビドラマの演奏会用編曲版ということで、全6曲が倉本総脚本のストーリーに即した音楽になっているわけなんだけど、その元となった1983年のドラマは知らない。でも、知らないからこそ雄弁な物語性を感じるというか。途中でアイヴズばりに軍楽隊が乱入してくるところなんて、実際の物語以上に意味深長に聞こえる。続くマーラーでは長身痩躯のトレーケルのまろやかボイスを堪能。マーラーのもう一つの「アダージェット」、「私はこの世に捨てられて」が美しすぎる。
ベルシャザールの饗宴●後半はウォルトンの一大スペクタクル「ベルシャザールの饗宴」。P席に陣取る180名くらいの大合唱団に、LR両サイドにバンダも配置されてデラックス感満載(合唱は暗譜)。これでもかというくらいに何度もクライマックスが築かれる壮麗な音楽なんだけど、力づくになることなく、むしろ清澄さが際立っていた。
●これ、ウォルトン29歳の作品なんすね。若い。字幕があれば最高だったけど、三浦淳史先生訳の対訳がプログラムに載っていたのは吉。
ダニエル書第5章。ベルシャザールの饗宴の最中に、突然人の手の指が現れて壁に「メネ、メネ、テケル、ウパルシン」を書く。王はバビロンの知者たちを集めて、読み解いた者を国の第三のつかさとするというんだけど、だれも読めない。しかしユダからの捕虜ダニエルが、これを読む。「神はあなたの治世を数えて、これをその終りに至らせた。あなたははかりで量られて、その量の足りないことがわかった。あなたの国は分かたれて、メデアとペルシャの人々に与えられる」。ベルシャザールはダニエルを国の第三のつかさであると命ずる。その夜のうちに王ベルシャザールは殺される……。ああ、なるほどそういう話だったのねとこれ読んでわかる。気になるダニエルの運命の行方は第6章へと続く。次回、獅子の穴が大活躍、この次もサービス、サービス。

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