●もう先週だけど、1日はブロムシュテット指揮バンベルク交響楽団へ(サントリーホール)。ベートーヴェンの第3番「英雄」と第7番のプログラム。これは今年足を運んだ演奏会のなかでもっとも客席が沸いた公演だったかも。第7番が終わった瞬間の怒涛の「ブラヴォー」もスゴかったが、最後はやはり一般参賀に。N響といい、DCHで観るベルリン・フィルといい、ブロムシュテットが指揮したときの一般参賀率の高さには驚嘆する。
●N響で「新世界より」を聴いたときも思ったけど、ブロムシュテットが振るとみんなブルックナーみたいに聞こえる。レンガを土台から黙々と積み上げていって、しまいにとんでもない威容が浮かび上がる、といったように。ぜんぜん中庸の美じゃないし、ベートーヴェン7番は意外とヘンタイ度も高かった。ぶっきらぼうに見える棒が次第に音楽を白熱させてゆく様は圧巻。そして多くの老大家と異なり、85歳なのにスルスルッと身軽に歩ける壮健さは人体の神秘。オケは先入観よりずっとまろやかなサウンドを聴かせてくれた。
●「シューマンの指」(奥泉光著)がもう文庫化されている。文庫版解説は片山杜秀さん! この小説は音楽ファンのために書かれた傑作。でもどう傑作かを言おうとすると、そのこと自体がネタを割ってしまう可能性があるから、あまり言えない。未読の方はamazonのレビューから目をそらす必要あり。
November 5, 2012