●R・シュトラウスの「家庭交響曲」が一週間に2つの違うオーケストラで演奏されるという珍しいことに。17日の飯森範親指揮東京交響楽団、21&22日のエド・デ・ワールト指揮NHK交響楽団、ともにメインプロが「家庭交響曲」。会場も同じサントリーホール。N響は2公演あるから、この週はサントリーホールで3回、「家庭交響曲」が演奏されたってことなんすよね。嬉しいような、もったいないような。
●飯森&東響は少し変則的なスタイルの公演で、前半にマーラー~ベリオ編の「若き日の歌」より5曲(ロディオン・ポゴソフBr)、後半にシュトラウス「家庭交響曲」のみ。これだと正味1時間強しかないわけだけど、前半のおわりにマエストロ飯森が「家庭交響曲生オケ付き解説トーク」を披露してくれた。「これがリヒャルトで、このテーマがパウリーネ、ここは息子のフランツ……」と、合間に自分でオケを実際に振りながら説明するという超親切仕様。この解説にしっかり時間を取って、それから休憩に入って後半で本番を聴くという流れ。これ以上はないぜいたくな楽曲解説ですごくありがたかったけど、その分、プログラム本編が短くなっているので、お客さんとしては意見が分かれるところかも。事前の解説も効いてか、本編の「家庭交響曲」はいっそう描写的で、能弁。わざわざチェロを第一ヴァイオリンの向かい側に配置して、夫婦の対話(vnがパウリーネ、vcがシュトラウス)まではっきり見せてくれて。
●一方、デ・ワールト&N響はぜんぜん違う「家庭交響曲」。「家庭」よりも「交響曲」のほうに焦点が当たっているというか、見事なアンサンブルでシュトラウスの精緻な管弦楽法をたっぷりと楽しませてくれた。金管は好調、重厚な弦とあいまって堅固で骨太のシュトラウスに。終盤の快速テンポがスリリングで、この曲にあると思っていた「てへ。」みたいな照れとか「(苦笑)」みたいな要素にあまりかまわずに、猛然と疾走して鮮やかにフィニッシュ。これだけビシッと言ってやればパウリーネもフランツも大人しくなるだろう、くらいの勢いでオヤジ圧勝感。
●フランツ……、リヒャルトのお父さんもフランツなんすね。ところで、「家庭交響曲」に描かれてた息子フランツは、大人になってどういう人物になったんすかね?
November 23, 2012