●もう先週だけど23日はピエール=ロラン・エマール公演二日目へ(トッパンホール)。一日目の続編みたいにドビュッシーの前奏曲集第2巻が前半に演奏されて、後半はアイヴズのピアノ・ソナタ第2番「コンコード」。ほぼ同時期に作曲された両曲が並ぶ。これが同時期なんだからアイヴズってどんだけ先進的なの、いやメインストリームからすっとんきょうなくらい孤絶しているっていうべきか。あと、もうひとつのプログラムの意図としては「引用」。アイヴズの「コンコード」にはベートーヴェン「運命」ってのはいいとして、ドビュッシーはなんだっけ? えーと、「ピックウィック卿を讃えて」が「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」くらいしかわからないんだけど……あ、「花火」のおしまいに一瞬「ラ・マルセイエーズ」か。で、ワタシは行ってないんだけど前日のエマールのレクチャーでは「交代する3度」にストラヴィンスキー「春の祭典」が出てくるとか、そんな話がされたんだとか。
●一日目と同様、コントラストの鮮明なドビュッシーもよかったけど、やはりアイヴズが断然いい。実演で目の当たりにするとこんなに凄絶で吸引力が強くて、しかも楽しい曲だったのかと再認識。フィジカルにスゴい。トーン・クラスター用のものさし(じゃないだろうけど、黒い棒)をエマールがポロッと落っことすスリリングな場面もあったり(ポロリもあるよ!)、途中の楽章終わったとたんにピロピロ携帯鳴ったりとか、これだけ強靭剛悍な音楽が鳴り響けばそんなハプニングも起こってしかるべきと思う。眉間にシワを寄せて聴く100%シリアスな曲なんだけど、どこかスラプスティック風味。あちこちにジャジャジャジャ~ンが出てくるし。ソローとかナサニエル・ホーソーンって何のことよ? 超越主義、ププッ、みたいな。譜面を置いて鬼神のごとく鍵盤と格闘するエマールは、澄ましてドビュッシーを弾いてるときよりだんぜん精彩を放っていた。
November 27, 2012