●昨日、LFJ2013記者発表が開かれ、それと同時に有料公演プログラムもウェブ上で公開された。開催日は、5月3日から5日までの3日間、有料公演は135公演、チケット15万枚を売り出す。海外から500人以上、国内300人以上のアーティストが参加。テーマは「パリ、至福の時」。ベルリオーズからブーレーズまでのフランス音楽、そしてパリで活躍したスペイン人作曲家たちの音楽を中心としたプログラム構成。他にこの音楽祭ならではのジャンルを超えた企画もいくつか。「渋さ知らズ」がよみがえらせる20年代パリのキャバレーの狂乱とか、カニサレスのフラメンコ・ギターとか。公式レポートブログもご覧いただければと。
●で、ここからはプログラムを見て個人的に感じたことを。前回、音楽祭最終日の会見をきっかけとして「もっとお客を入れるために有名曲をたくさん取り上げるべきでは?」「いや、それは違うでしょ」的な議論が展開されていた。結果どうなったかというと、LFJはLFJだった。というか、いつにもまして聴いたことのない曲だらけ(笑)。正確に言えば遠目で見たプログラムと近くに寄ったプログラムと見え方が違うというかな。つまり、5000人入るホールAのほうには「ボレロ」や「カルメン」組曲、ラヴェルのピアノ協奏曲が並んでいて、「初めての方でもどれを聴いても安心」というフレンドリーな構えがしっかり作られていて、一方で中小のホールを見るとかつてないほど「ここで聴かなかったら一生聴けないかも」的な演目が並んでいる。
●特に室内楽がスゴいと思ったかなあ。デュポンのピアノ五重奏曲「詩曲」、ルーセルのフルート、ヴィオラ、チェロのための三重奏曲、クラ(クラス)の五重奏曲、アーンのピアノ五重奏曲、カプレのハープ五重奏曲「赤き死の仮面」、グラナドスのピアノ三重奏曲、ピエルネのピアノ三重奏曲、ダンディの弦楽四重奏曲第3番、トゥリーナのピアノ四重奏曲……。ショーソンのピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のためのコンセールやフランクのピアノ五重奏曲がポピュラー名曲に見えてくる。LFJってフランスの音楽祭なのに、今回初めてじゃないすか、フランス音楽をテーマにするのは。やはり自国の音楽(パリのスペイン人たちも含めて)をやるとなると一歩踏み込んだ感が出てくる。アーティストももともと最適化されているというか。
●それと現代音楽畑からアンサンブル・アンテルコンタンポランが大々的に参加。指揮はスザンナ・マルッキだ。ブーレーズのシュル・アンシーズ他、ブーレーズのピアノのためのアンシーズ、マントヴァーニの「ハンガリー風に」他、ブーレーズのデリーヴ1&ミュライユ「セレンディブ」の3プログラム。これがLFJ価格で聴ける。ホールはCとB7とD7。D7以外は、昨年の様子だと問題なくチケットを取れそうな場所だがどうなるか。
●あとピアニストはベレゾフスキーとかエル=バシャ(ラヴェル全曲シリーズ)、ペレス、ヌーブルジェ他のおなじみのメンバーに福間洸太朗さんほか日本人も多数。ぱっと見て目についたのは、去年ウストヴォルスカヤやらロスラヴェッツをバリバリ弾いて異彩を放っていたユーリ・ファヴォリンが、今年はアルカンの交響曲(ピアノ独奏曲です)とか、ブーレーズのソナタ第1番&デュフール「穏やかな海」他を弾く。あとペヌティエが弾くオアナ「24の前奏曲」なんてのもある。
●と、たくさんありすぎて整理がつかないんだけど、近年のLFJのなかではもっとも迫力のあるプログラムになったのでは。もちろんここに挙げてないだけで名曲もたっぷりと取り上げられているので、「ボレロ」をいろんな演奏で聴くとか、「アランフェス」からフラメンコまでギタリスト三昧とか、お好みのコースが楽しめるはず。
February 13, 2013