●何日か前にロイターにこんなニュースが載った。「英警察に現れたバットマン、正体は中華料理の配達人」。2月25日未明にブラッドフォードの警察署にバットマンの扮装をした男が現れて、容疑者の男を警察に引き渡した。ニュースの第一報はまるでおとぎ話のようだった。ところがこの少し太めのバットマンの正体は中華料理店の配達員で、容疑者とは彼の友人だった。容疑者は自ら出頭しようと思い立ち、バットマン氏に自分を警察に連れて行ってくれと頼んだ。バットマン氏はわざわざそんなコスチュームを着たわけではなく、たまたまそのときロンドンでバットマンの格好でサッカー観戦をしており、そのまま着替えずにブラッドフォードに帰って、友人の容疑者を警察署に連れて行った。軽いおふざけでバットマンをきどったら、それが世界中でニュースになって流れた。
●で、このロイターの記事なんだけど、「この男はいつもバットマンの格好でサッカーを見ているのか?」と疑問に感じないだろうか。だいたいブラッドフォードの人間がどうしてロンドンに試合を……ってところで、あっ!と気づいた。
●それって、2月24日にウェンブリー・スタジアムで行われた、あのブラッドフォード・シティvsスウォンジーのリーグカップ決勝戦じゃないすか! ブラッドフォードはなんと4部リーグのチーム。大番狂わせで決勝まで勝ち進んでしまった。一方、スウォンジーはプレミアリーグのチームだが、こちらも最近ようやくプレミアまで昇格してきたウェールズの小さなクラブ。つまり特大番狂わせvs番狂わせの決勝戦になった。結果は実力通り0-5でスウォンジーが大勝して初優勝を飾ったわけだが、この試合は勝者も敗者もハッピーになれた試合だったはず。スウォンジーにとっては夢のような優勝だし、ブラッドフォードだって4部リーグながらウェンブリーまでやってきたんだから、十分におとぎ話だ。
●一生に一度あるかないかの奇跡に、男はバットマンの扮装で臨んだわけだ。バットマンになにか由来があるのかどうかは知らないが、特別な舞台だったことは理解できる。そして、その深夜、ブラッドフォードに帰還して、警察署でもう一つのおとぎ話の主人公になった。
March 13, 2013