●15日はふたたびすみだトリフォニーホールへ。今回の「ブリュッヘン・プロジェクト」最終日で、新日本フィルが登場。曲はシューベルトの交響曲第5番と第8番(第9番)「ザ・グレイト」。
●シューベルトの5番は弦楽器をぐっと刈り込んだ小編成。今回、18世紀オーケストラとの共演で聴いてきたのとはまったく違う音が響く(そりゃそうなんだが)。第1日のベートーヴェンでブリュッヘンはかつての18世紀オケとの共演で聴かせてくれた輝かしい音をまた取り戻していた。でもこの日のシューベルトは昨年までずっと新日フィルと共演してきたシリーズに回帰、静謐で彩度を落としたセピア調の響き。去年の続きみたいに。第2楽章でしみじみ。
●後半「グレイト」は一転して大編成に。テンポは遅い。巨匠指揮者の晩年らしく巨大な音楽に。第4楽章のリピートもあったのでいったい何分かかったのか、はかっておけばよかったけど、永遠に終わらないような、そして終わってほしくないような天国的音楽になった。冒頭のホルンからして惜別の歌に聞こえるし、第2楽章は「エロイカ」ばりの葬送音楽のよう。寂寞とした思いにかられるが、後半はオケがライブならではの白熱を見せて、ブリュッヘンの掌から飛びたって壮絶なクライマックスを築きあげた。最後の一音はふんわりディミヌエンド。客席はほぼ総立ち、一般参賀に(もちろん車いすに乗って)。
●ステージの近くまでやってきてお客さんが拍手を送る様子はすっかり老巨匠最後の来日公演風。あのブリュッヘンがカール・ベームみたいに拍手を贈られている。伝説かも。伝説にすべき。伝説だ。
April 17, 2013