●LFJ2013閉幕。今年も濃密な三日間だった。自分の見聞きしたものについてはまた明日以降にして、本日は最終日の夕方に開かれたプレス懇談会の様子から。
●まず総責任者である東京国際フォーラム取締役広報部長の上垣智則さん、エグゼクティブ・プロデューサーの同社企画事業部長鈴木順子さんから開催結果報告があり、今年の有料チケット販売率は最終日15時30分の時点で88.7%に到達しており、最終的には90%にまで届くのではないかと発表された。昨年は主にホールAに客席が目立ち76.3%であったので、大幅に販売率が伸びたことになる。販売数は14時時点で13万5千枚強。
●その理由は簡単には分析できないと思うが、今年は様々な点で昨年より指摘されていた課題が洗いなおされていたのは感じることができた。去年までは丸の内エリアでの周辺イベントと東京国際フォーラムの本公演が別個に開催されていた感が強かったが、今回はどちらも会期を合わせて3日間同一日程になった。別々に発行していたガイドブックも一体化されてフリーのガイドブックが発行された(一方、有料公式ガイドブックはなくなった)。地上広場のチケット販売ブースが復活した。当日配布プログラムが改善された。チケット発券機ができた。いろんなことが積み重なって効力を発したのかもしれない。ホールAに集客力のあるプログラムが組まれ、一方で中小のホールは珍しい作品をどんどん取り上げたというのもよかったのかもしれない。アーティストがよかったのかもしれない。あるいは、単に「三日間ともお天気だった」ことが決定的だったのかもしれない。現時点では大ざっぱな推測でしか語れない。ともあれ、客席が埋まってたのは肌で実感できた。5000人のホールを抱えているのに、90%は驚異的。
●次回テーマについては、ルネ・マルタンさんから発表。来年のナントでは「アメリカ」がテーマ。しかし10周年を迎える東京ではナントと異なるテーマを掲げる。過去にとりあげた作曲家9人に、ナントの「アメリカ」からガーシュウィンを一人加えて、10人の作曲家が主役となる。モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、ブラームス、グリーグ、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ラヴェル、ガーシュウィン。
●この10人のなかにはバッハが入っていない。というのも、再来年のナントはバロックがテーマ。1685年生まれの3人、バッハ、ヘンデル、スカルラッティが中心となる。なので、再来年の東京でも同様のテーマをとりあげるかもしれない、との話。
●ちなみに来年のナントの「アメリカ」だが、これが実に魅力的なプログラムになりそうで、企画の中心となる視点がいくつか挙げられていた。ひとつはアメリカ人作曲家。アイヴズやライヒやグラス等。それから、アメリカに移った作曲家たち。ラフマニノフ、バルトーク、マルティヌー、シェーンベルク、ストラヴィンスキー、ヴァレーズ。彼らのアメリカ時代の音楽。さらに1920年以降のアメリカの財団等が委嘱した作品。たとえばメシアンのトゥランガリラ交響曲とか、デュティユー、武満、ベリオらの作品。そして、アメリカのポピュラー音楽。ジャズやブルース、ゴスペル、ミュージカルなど(コルンゴルトの名が挙がっていた)。
●いやー、このナントの「アメリカ」っていうのは見事じゃないすかね。単に「アメリカ音楽」ではなく、「アメリカが作った20世紀音楽史」。ワクワクする。これを聞いて、多くの方が「それをそのまま東京に持ってきてほしい」と思ったのでは。しかし、一方このテーマで5000人のホールAを三日間埋められるかといえば無茶な話ではある。ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」とかラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」ばかり並べるわけにもいかないし。うまい具合に左から見たら「10年総集編」、右から見たら「アメリカ」みたいな巧妙なプログラムは組めないものすかねー。
May 7, 2013