●これは必携の一冊では。「戦後のオペラ 1945~2013」(山田治生 編・著、渡辺和 著/新国立劇場運営財団情報センター)は、戦後に書かれた代表的なオペラ57作品を取り上げて、それぞれの作品の概説、あらすじを紹介している。戦後のオペラっすよ? まず57作品を選ぶというのが大変そう。メシアンの「アッシジの聖フランチェスコ」とかリゲティの「ル・グラン・マカブル」クラスの有名作品はだれが編者になっても入ってくるが、そういう作品は決して多くない。ブリテンやストラヴィンスキー、プーランク、シェーンベルクあたりが健在だった40年代、50年代あたりはまだいいとして(いや、それでも難問だけど)、60年代はどれを選ぶか。ここでは芥川「ヒロシマのオルフェ」、ヘンツェ「若き恋人たちへのエレジー」、マルティヌー「ギリシャ受難曲」、ヒンデミット「ロング・クリスマス・ディナー」、ブリテン「カーリュー・リヴァー」、ツィンマーマン「軍人たち」、ピアソラ「ブエノスアイレスのマリア」、ペンデレツキ「ルダンの悪魔」が選ばれている。いやー、これらの作品について日本語で書かれたあらすじがまとまってるなんて、なんてありがたいの。
●最近の作品だと2000年代で7作。サーリアホ「彼方からの愛」、タン・ドゥン「TEA」、ジョン・アダムズ「ドクター・アトミック」、チン・ウンスク「不思議の国のアリス」他。
●全体に実用性というか、参照可能性を考慮した作品選択になっているようで心強い。あと、価格。カラー口絵もあって定価700円+税とは。通常の商業出版ならよほど部数がないと無理なわけで、ずいぶんお買い得。
May 10, 2013