●久々の「十二国記」シリーズ新刊、「丕緒の鳥」(小野不由美著)を読む。これはすぐに読まないと賞味期限があっという間に切れそうだと思って、amazonに予約してしまった。短編4作なので読みはじめればすぐ。帯によれば「12年ぶりのオリジナル短編集」だとか。そんなに久々だっけ?
●この「十二国記」シリーズ、異世界中華ファンタジーで、王政による12の国があって、それぞれの国で神獣である麒麟が天意にもとづいて選んだ王が統治しているという設定(一時期NHKでアニメにもなっていた)。これが抜群におもしろいんすよ。当初はジュブナイル扱いだったので「講談社X文庫ホワイトハート」から刊行されていて、思い切り若い女子向けでレジに持っていくのに勇気が必要だったのが(もう大昔だ)、そのうち大人向けの講談社文庫から発売されるようになって、さらに去年から版元を変えて新潮文庫から新装版として刊行中(特設サイトまでできてる)。もはや異世界ファンタジー小説の古典か。
●で、最新作「丕緒の鳥」(ひしょのとり)。意外と世界観やら舞台設定やらは覚えているもので、すんなりと「十二国記」の世界に入っていくことができた。ただ、この4作はいずれも小さな世界を描いている。王がどうとか、麒麟がどうとかいった大きな物語の隙間を埋めるような、市井の人々のエピソード集。地味なんだけど、細部まで豊かな想像力に彩られていて、異世界が確かなリアリティをもって眼前に広がってくる。
●ひとつ感じたのは「十二国記」というシリーズが大人になったということかな。個人と社会や組織とのかかわりについて、大人が感じる問題意識がファンタジーの装いをまとっている。シリーズの当初は違ってたんすよね。「月の影 影の海」は日本の女子高生が異世界に連れられて行ったら、そこでは自分が女王だったという変型シンデレラ・ストーリーだったわけだし、全般に「ドラえもん」的な青少年の夢想にこたえてくれなくもない成長小説だったと思うんだけど、今作ではすっかり大人目線の小説になっている。読者もシリーズと一緒に年をとっているからそうなるんすかね。
●これから読もうって方は新潮文庫の「月の影 影の海」からスタートするが吉。あと、今後「書き下ろし長編」も刊行されているそうなので、鶴首して待つしか。
July 5, 2013