●8月15日は尾高忠明指揮東京フィル「ハートフルコンサート2013」へ(東京芸術劇場)。毎年この日に黒柳徹子さんの司会で開かれる演奏会で、楽しいトークの合間に平和への願いやUNICEF親善大使としての最近の活動についての報告がさしはさまれる。今回は、今年3月に訪れた南スーダンについて。長期化した内戦の末に独立した国家であり、特に子供たちへの医療施設が不足していることや学校教育が切実に求められていることなど。こういったトークがあっても、雰囲気が辛気臭くならず、なおかつ客席の共感を得られるというのが黒柳徹子さんのお人柄。ほかの誰にもできない。「アフリカの出来事に関心を持ってほしい」というメッセージ。
●で、今回は20周年を迎えたJリーグとのコラボレーション・コンサートということで、ゲストが川淵三郎キャプテンだったんすよ。選曲はヴェルディ「アイーダ」の「凱旋行進曲」以外はそれほどサッカー由来というわけではなかったんだけど、入口にJの各チームのシャツを着用したスタッフの方々がいたり、Jリーグ杯のレプリカが飾られていたり、プログラムに大東チェアマンの挨拶が載っていたりと、サッカー成分は高かった。黒柳徹子さんからもポンポンとツボに入る名言が飛び出した。「本田さん、昨日の試合でも球をお入れになったんですって」。
●川淵キャプテンへのサプライズ演奏として、東フィルが「翼をください」を演奏した。すると、舞台上で聴いていた川淵キャプテンが涙ぐんでいる。「苦しかったフランスW杯予選でサポーターたちが、『フランスへと飛びたつ翼をください』とこの曲を歌ってくれたことを思い出す」。そう話しながらも涙が止まらない。
●あのフランスW杯の最終予選の苦しい道のりはサッカー・ファンには忘れられないものだった。しかしスタジアムで「翼をください」が聞こえてきたときにはのけぞった。え、そんな選曲ありえない。殺伐としてささくれ立った最終予選の空気と、この曲から感じる学校教育的なイメージがまるで合致していないような気がして。でも、重圧にさらされていた当事者にとっては胸を打つ選曲だったのだなと、今頃になって知る。
August 16, 2013