●13日、インゴ・メッツマッハーの新日本フィル コンダクター・イン・レジデンス就任記者発表会が開かれた(東武ホテルレバント東京)。ちょうどスカラ座公演のために来日中であるミュージック・パートナー・オブ・NJPのダニエル・ハーディングも会見に臨席して、豪華な顔ぶれに。メッツマッハーは「これからの活動をとても楽しみにしている。ハーディングと一緒にこのオーケストラのために尽力したい」と抱負を語ってくれた。写真は左からハーディング、メッツマッハー、ソロ・コンサートマスターの崔文洙さん。
●で、型通りのあいさつや新シーズンへの展望はさらりと終わって、自然と話の流れのなかでメッツマッハーとハーディングの間で日本人の西洋音楽への接し方のような話題になっていったのがおもしろかった。大まかにこんな感じ。
●メッツマッハー「日本の聴衆はクラシック音楽への理解が深い。日本社会にこれだけ西洋の文化が受け入れられているということに感動する。ダニエルと話していて思うのは、ときには日本は西洋音楽という異文化に対してリスペクトを持ちすぎているのではないか、ということ。異質なものとしてではなく、自分たちの文化と同じように向かってきてほしい。西洋音楽に対してもっと身を委ねることが大切ということで見解は一致している。新日本フィルは技術的にはなんでもできるし、改善するところはほとんどない。だから客観的に接すべき作品に対しては申し分ない。しかし作品に深く入り込むタイプの音楽には、もっと体ごとぶつかって、献身してほしい。受け身ではなく、強い姿勢で向かっていくような音楽を作り出せるよう二人で考えていきたい」
●ハーディング「日本に来ると、われわれヨーロッパ人は野蛮人が文明社会に迷い込んだような気分になることがある。日本人は西洋音楽に対して礼儀正しすぎることがある。イギリスからやってきた私のようなブタは(笑)オーケストラに対して『もっと、もっと!』というと、オケは『まるで獣みたいですね』という。そう、獣だ。リスペクトは大事だけれど、手を汚さずに獲物を手に入れることはできない。音楽は神棚に飾っておくものじゃない。盆栽みたいに外から『ああ、美しいですねえ』と眺めていてはつまらない」
●ハーディングは自分たちのタイトルについても率直に話していた。「二人の指揮者がいっしょにオーケストラにかかわるのは奇妙な状況であるという感は拭えない。でも二人ともオーケストラに対して強い気持ちで向かって、貢献したいと思っている。オーケストラにハードワークさせたい。私たちは現代の家族らしい、ハードワークする家族になる。ミュージック・パートナーというタイトルがなにを意味するのか、実はいまだによくわからない(笑)。でも、この状況を楽しんでいる」
●と、こんな感じで就任記者発表会の雛壇でする話とは思えない感じのやり取りになった。この二人だからでもあるだろうし、楽団のキャラクターが出ていたという感も。
September 14, 2013