●9日はノリントン&N響定期へ(サントリーホール)。痛快すぎるベートーヴェンに笑いが止まらず、心のなかで。 グルック(ワーグナー編)の「アウリスのイフィゲニア」序曲で幕を開け、ロバート・レヴィンの独奏でベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番。以前の協奏曲でもそうだったように、今回も配置が独特。ピアノはピアニストの顔が客席を真正面に向く方向で中央に置かれる。その周りを弦楽器奏者たちがぐるりと囲む(対向配置)。指揮者はピアニストのすぐ下手側に立ち(いや、座り)、アンサンブルの輪の中に入る。コントラバスは最後列中央に横並び。客席から見るとピアニストは正面を向いているし、指揮者は斜め45度くらいで客席側を向いているし、ヴァイオリニストたちは斜め45度くらいで舞台奥を向いていて、客席に半ばお尻を向けて座っている。
●レヴィンは風貌からしてもいかにも学者なんだけど、ステージ上では弾けまくる。第1楽章では見事な自作カデンツァを披露。で、第1楽章が終わったところで、ノリントンがレヴィンに向ってニコニコしながらパチパチと拍手した! 楽章間の拍手を率先して自ら実践する指揮者を始めて見た。続いて、客席からもパラパラと拍手が起きた。いや、もっと盛大に手を叩くべきなのかも。客席もピリオド聴法で応酬だっ!
●レヴィンはアンコールにベートーヴェン「7つのバガテル」op.33から第7番変イ長調。両手を大きく広げてドヤッ!とブラボーにこたえる姿が味わい深い。オッシャー!とか言ってそう。
●後半の交響曲第6番「田園」はさらに仕掛け満載のビックリ箱状態。今回も倍管仕様で大編成。ピュアトーンである以上に、あちこちに聴いたことのないような表情が飛び出してきて猛烈に楽しい。第2楽章はサイズ控えめで、各弦楽器たぶん1プルトずつ休ませて前後楽章の響きとコントラストを作る。鳥のさえずりシーンの生々しさといったらなかった。ノリントンの非凡なところは、こんなにヘンなのに音楽の流れに淀みがなく、精彩に富み喜びにあふれているところ。ユーモアの偉大さを感じる。第5楽章の輝かしさなんて、これまでどんな「田園」にも聴いたことのないもの。
●常にステージ上で見せてくれるノリントンの上機嫌さ。これには敬服するしか。
October 11, 2013