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October 21, 2013

ラザレフ&日フィルのスク3→ノリントン&N響のブリテンとベートーヴェン

●19日は思い切ってダブルヘッダーを敢行。14時からラザレフ&日本フィルへ(サントリーホール)。お目当てはスクリャービンの交響曲第3番「神聖なる詩」だったのだが、前半の曲目がチャイコフスキーのバレエ組曲「眠れる森の美女」と武満徹の「ウォーター・ドリーミング」。となれば、これは「夢」プログラムなのでは。スクリャービン作品の闘争→快楽→神聖な遊戯という標題に明示的に「夢」は登場しないが、作品全体を司る冒頭主題が作者の壮大な夢想への誘いとして聞こえてくる。夢想っていうか妄想だけど。「眠れる森の美女」の冒頭からいきなりラザレフ流の熱風が吹き込む前のめりチャイコ。怪作スク3は難物だとも思わされたが、作品のキモカッコよさは存分に伝わってきた。ステキすぎる。
●ラザレフほど指揮しながら客席とコミュニケーションをとる指揮者はいない。指揮しながら、客席を向いて「ここ、聴きどころだから!すばらしいでしょ?」みたいに教えてくれる。で、曲が終わるとクルッと客席を向いてドヤ顔というのが得意技。
●18時からはNHKホールでノリントン&N響。休日の原宿はいつにも増して大勢の若者たちで賑わっていた。ドトールコーヒーに行列ができてしまう戦慄の街飽和状態。ノリントンのプログラムは前半にベートーヴェン「エグモント」、ブリテンの「夜想曲」(ジェームズ・ギルクリストのテノール)、「ピーター・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」、後半にベートーヴェンの交響曲第8番。前半が圧倒的に長い。で、どちらかといえば、主役はブリテンだったと思う。ギルクリストの澄んだ声と来たら。ニュアンス豊か。「夜想曲」、伴奏のオケは一管編成なんすね。「4つの海の間奏曲」もノリントン節炸裂で、これも(新しい曲なのに)ノン・ヴィブラート。聴きなれた演奏とは違うが、また違った美しさがあり。
●この日も弦は対向配置で、後ろに仮設の反響板を使用(編成の大きな「4つの海の間奏曲」でもそのまま使われた。そうするしかないんだろうけど)。これはかなり効果的なのでは。で、後半のベートーヴェン8番。これまでベートーヴェンには倍管編成を採用することが多いノリントンだけど、この曲は通常の編成だった(この曲の初演は倍管で……ってのはどうでもいいか)。小気味よく軽快、作品にあふれるユーモアを全面に押し出す。1楽章でも2楽章でも、終わるところで客席を向いて「ほら、これ、おかしいね」という表情を見せる。終楽章は猛速テンポで痛快。最後はクルッと客席に向いて決めポーズでドヤ顔フィニッシュ。ああ、それさっき日フィルのラザレフでも見た! なんと一日で二回も指揮者の「回転ドヤ」を見ることになろうとは。どうしよう(どうもしません)。
●ノリントンはカーテンコールの度に何度も「どうだー!」と両手を広げる決めポーズをとって、客席の笑いをとっていた。それじゃまるで「モンティパイソン」にでも登場しそうな指揮者ですよ……。サー・ロジャー、偉大すぎる。このポーズは、たぶん先日のBプロでロバート・レヴィンがやっていたのをノリントンが気に入って連発しているんじゃないかと思うんだけど、どうなんでしょ。