●最近の新譜で圧倒的な感銘を受けたのは、ユジャ・ワンとドゥダメル指揮シモン・ボリバル交響楽団による、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番&プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。爽快。特に後者はよくぞ第2番を選んでくれたと思う。敏捷で硬質なソロと、ムンムンと熱気をはらむオーケストラ。ドキドキする。ライブ録音で拍手が入っているのだけが惜しいかな。今を時めく若きスーパースターが中国とベネズエラから生まれて、DGの看板を背負うというのも実に今日的。
●そして、なんといってもこのジャケが最強に強まってる。これこそユジャ。キモ美しいっていうのかな。欧米人視点のアジアン・ビューティを過剰に演じた結果、ジャケから批評性が立ちのぼる。彼女のステージでの足を交差させてコクンと折れ曲がる深いお辞儀みたいに、作為のない自然さを徹底して拒むことで、細部にまで意匠が凝らされた世界のなかで燦然とした輝きが放たれる。スタジオやコンサートホールでかぐわしいストレスの香りを発散させるアイドル、という自画像を描き続ける才能豊かな女の子。野山の澄み切った空気のなかでは一秒だって呼吸できない。そんな世界観がジャケに込められている。国内盤のジャケは安全な路線にさしかえられるようだが、購買層の違いを考えればしょうがないか……。
November 15, 2013