●11日はトッパンホールでアンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)と佐藤俊介(ヴァイオリン)の共演によるオール・モーツァルト・プロ。先週のシュタイアーのソロ(ディアベリ変奏曲)は聴き逃したのだが、こちらのモーツァルトを満喫。精彩に富み、闊達で機敏、陰影も豊か。フォルテピアノはアントン・ワルター(1800年頃)レプリカ。
●前半にヴァイオリン・ソナタ ハ長調K303があって、続いてピアノ・ソナタ第8番イ短調K310。このイ短調があまりにも雄弁な音楽なので「うーん、やっぱり名作ぞろいのピアノ・ソナタが一曲入ってしまうと、ヴァイオリン・ソナタはかすんでしまうんじゃないかなあ」などと案じたが、まったくの杞憂、むしろフォルテピアノではなく主役はヴァイオリン。シュタイアーの鬼才、身振りの大きさにもしっかりと共鳴。ヴァイオリン・ソナタ ホ短調K304、「ああ、私は恋人を失った」の主題による6つの変奏曲 ト短調K360とさらに短調の曲を並べて、最後に華麗で高揚感にあふれるヴァイオリン・ソナタ ニ長調K306で鮮やかなコントラストを描いた。
●あ、こういうときはモーツァルトの「ピアノ・ソナタ」じゃなくて「フォルテピアノ・ソナタ」と書くべきなのか。小さな音しか出ないほうが「フォルテピアノ」で、恐ろしく巨大な音がするほうが「ピアノ」というのは、後世の考古学者に謎を残しそうな気がする。
December 12, 2013