●17日夜は大久保の淀橋教会で「大井浩明/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全32曲連続演奏会」第6回。番号順にベートーヴェンのソナタを様式順・時代別のフォルテピアノで弾き分けるというシリーズで、今回はソナタ第22番、第23番「熱情」、第24番「テレーゼ」、休憩をはさんで第25番「かっこう」、第26番「告別」。楽器は2種類が用意され、1802年ブロードウッド、1814年ブロードウッド(スクエア・ピアノ)。ともにアクションはイギリス式シングルエスケープメント。「テレーゼ」と「かっこう」の小さな作品がスクエア・ピアノで演奏された。
●会場はコートが手放せないくらい寒かったが、音楽は熱かった。以前からこのシリーズで感じることだけど、楽器の音像の小ささ(モダンピアノ比)に対して、ベートーヴェンの楽想は大きく、その相対的な巨大さが浮き彫りになっている。ただ、第1回の頃に比べれば、楽器の発達によってその差は縮まってきているのかも。もっとも印象に残ったのは、凛然として推進力にあふれた第23番「熱情」。強奏で楽器が軋みながら白煙を上げるかのようなスペクタクルもさることながら、第2楽章の変奏曲が快感。変奏ごとに音価を細かくしながらスピード感を増してゆく様子は、フォルテピアノの音質ならではの鋭い楔が連なるかのような華やかさを生み出し、平穏で柔和な主題へ回帰するときに劇的な風景の変化を見せてくれる。アンコールに鈴木純明作曲、フォルテピアノのための「白蛇、境界をわたる」。
●次回は2/14に(おっと、バレンタインデーだ)第27番~第29番「ハンマークラヴィーア」、最終回は3/12に第30番~第32番。
January 20, 2014