●近年、音楽学者たちの資料研究によって第4楽章補筆完成版が注目を浴びていたブルックナーの交響曲第9番だが、この度、最新の研究に基づく「交響曲第9番 第3楽章抜き 削除完成版SPAM2014」が、サイモソ・ラトノレ指揮ペルリソ・フィルによって世界初録音されることが発表された。これは新たに発見されたブルックナーの手紙に「交響曲第9番は第3楽章以降を削除して、第2楽章までで完成としたい」と記されていたことから、第3楽章および第4楽章補筆版を破棄して作られたもので、スコールズ、パリスター、アンデルソン、マクレアーら4人の編者たちの名前の頭文字をつなげて「削除完成版SPAM2014」と呼ばれている。編者のひとり、スコールズは「長大な作品ばかりを書いたという従来の誤ったブルックナー観を、この削除完成版によって覆したい」と述べている。
●一部の楽団員からは「新たに録音しなくても、すでにある音源から第3楽章を削除すれば十分なのでは」といった疑問も呈されていたが、指揮のラトノレは「最終楽章として見れば、第2楽章に新たな解釈の余地がある」と主張している。また、音楽関係者の間からは「これで演奏会から早く帰れる」と安堵の声もあがっている。
●なお、スコールズはブルックナーの交響曲第9番に続いて、シューベルトの「未完成」についても研究を進めており、作曲者は第2楽章を破棄して曲を完成させようとしていた可能性があるという。交響曲第7番「未完成」第2楽章削除完成版の出版を期待したい。
※ 本記事は4月1日に掲載されました。