●3日は東京文化会館小ホールで東京・春・音楽祭の室内楽公演「フィレンツェの思い出~若き名手たちによる室内楽の極」。長原幸太、西江辰郎(vn)、鈴木康浩、大島亮(va)、上森祥平、奥泉貴圭(vc)のメンバーで、ドホナーニの弦楽三重奏のためのセレナード、ブラームスの弦楽五重奏曲第1番、チャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」。もう猛烈にうまい。「若き名手」ってふれこみなんだけど、若いっていっていいのかな。たえるなら今のニッポン代表を見てその圧倒的な技術水準の進化っぷりに感嘆する気分(←どんなたとえだ)。トップレベルのメンバーで集まって弾くと、こんなにひきつける力の強い音が出てくるのだね……。
●聴く機会の多い四重奏を外して、三重奏、五重奏、六重奏と並ぶ音楽祭らしい多彩な選曲。ドホナーニの三重奏、寂寞とした第2楽章ロマンツァが美しい。でも三重奏って聴いているうちに内声にもう一声ほしくなるというか、やっぱり四重奏が基本形なのだなとも。ブラームスは四重奏+ヴィオラで五重奏。むせ返るような暗褐色のロマンが充満する。後半のチャイコフスキー「フィレンツェの思い出」は少し苦手な作品でこれだけは楽しめるかどうか自信がなかったんだけど、雄弁で対話性の豊かなアンサンブルのおかげで存分に満喫。アンコールは、なんと、ヨハン・シュトラウスの「雷鳴と電光」弦楽六重奏版。そんなのがあったとは。これがハチャメチャに弾けまくった楽しい演奏で、客席から繰り返し笑いが漏れた。音楽だけで笑いが起きるって、すばらしい。
April 4, 2014