●7日はエンリコ・オノフリのヴァイオリン・リサイタルへ(石橋メモリアルホール)。共演は杉田せつ子(ヴァイオリン)、桒形亜樹子(チェンバロ、オルガン)。「趣味の混淆」の題が添えられ、ヴィヴァルディ、コレッリ、テレマン、バッハ、ルクレール、ビーバー、生誕300周年を迎えたC.P.E.バッハと、バラエティに富んだ曲目。クープランの「趣味の混淆または新しいコンセール集」第14番第1曲を幕開けの音楽として、切れ目なくヴィヴァルディの「ラ・フォリア」へ。共演者との丁々発止の応酬によるスリリングな変奏曲。続く曲目でも、鮮やかな技巧、雄弁で歌にあふれたヴァイオリンを満喫。テレマンの2つのヴァイオリンのための「ガリヴァー組曲」は以前にも同コンビで聴いたユーモラスというか、コミカルな曲で実に楽しんだけど、今回はプログラムの最後に置かれたC.P.E.バッハのトリオ・ソナタ「陽気と憂鬱」もかなりおかしい。2台ヴァイオリンにそれぞれ対照的な「役柄」を与えるという点ではテレマンの終曲にも通じていて、「陽気」を奏でる第一ヴァイオリンと「憂鬱」を奏でる第二ヴァイオリンの芝居がかった対話?が愉快。ニールセンの交響曲第2番「四大気質」とか、ヒンデミットのピアノと弦楽オーケストラのための「4つの気質」とか、四大気質を題材にした作品があるじゃないすか。古代ギリシア時代の人間の気質の分類である、多血質、胆汁質、憂鬱質、粘液質の4つの気質。C.P.E.バッハは、そのなかの多血質(陽気)と憂鬱質(憂鬱)の2つを選んでトリオ・ソナタ「陽気と憂鬱」としたわけだ。広義の「四大気質」名曲の一曲として覚えておこう(笑。ほかにも何かあったっけ?)。
●オノフリのトレードマークとなりつつある自身の編曲によるバッハ「トッカータとフーガ」ヴァイオリン独奏版を今回も披露。演奏中に「パン!」と大きな音を立てて、弦が切れた。これにまったく動じることなく、客席に事情を説明してから袖に入って、5分ほどで再登場。この日は、別会場の公演でシギスヴァルト・クイケンの弦も切れたとか。延々と雨が降り続く梅雨の東京。ガット弦には厳しい季節なのか。
●オノフリはこの後、金沢へ。12日(木)のオーケストラ・アンサンブル金沢定期公演に出演する。前半はヴィヴァルディ、後半はハイドン「軍隊」他のバロック&古典派の2本立て。モダン・オケ相手のハイドンでどういう指揮をするのか楽しみなところ。お近くの方はぜひ。
June 9, 2014