●まずはスペインvsオランダの好カード。これは4年前の決勝の再現。しかし結果は衝撃的な1対5で、だれも想像できなかったスペインの大敗に。
●今回のスペイン代表チームの最大の驚きは、トップにジエゴ・コスタが入ったこと。ブラジル代表とスペイン代表のどちらも選択できるという立場で、なんと、スペイン代表を選んだ。おかげでジエゴ・コスタがボールを持つたびに場内からブーイングが。しかしこれが実に妙な光景に映る。
●これまでのスペインは、彼らが調子よく「ティキ・タカ」(細かく正確なパス回しのサッカー。ワタシの言い方では「ウイイレ名人」)のサッカーをすればするほど、トップにメッシの不在を感じさせた。そこにいるべきメッシがいない。そりゃいない。彼はアルゼンチン人なんだから。だからノートップのサッカーをやったり、フェルナンド・トーレスを置いたりしていたわけだ。奇跡の才能がそろってるけど、9番だけがいない。ところが、そこにアルゼンチン人ではなくブラジル人の正真正銘の9番が突然入った。ジエゴ・コスタはブラジル代表を選んでも絶対的エースになったはず。だって、フレッジとかフッキが先発してるんだから。スペインでフェルナンド・トーレスやビジャとポジションを争うほうが大変なくらいだ(一昔前ならスペインよりブラジルのトップのほうがタレント不足だなんてありえない話だが……)。
●スペイン代表に欠けた最後のピースである9番にジエゴ・コスタが入ったことによって、ガラガラと音を立てて「ティキ・タカ」は崩壊した……というのは一面的な話で、リアリスト、ファン・ハール率いるオランダ代表の策略が勝ったというべきか。ディフェンスを5枚入れた5-3-2、といっても局面によって柔軟なポジショニングがとられていたようだが、ともあれポゼッションで対抗する気はなく、厳しく鋭い守備ブロックを敷いて、攻撃時にはロッベン、スナイデル、ファン・ペルシーの突出した個の力に全面的に頼るという戦略。華麗なパス回しではなく、パス一本で好機を作って、次々とゴールを奪った。ファン・ペルシー、ロッベン、デフライ、ファン・ペルシー、ロッベン。一発パンチを受けるたびにスペインがガタッと膝をつく。微妙なPKでスペインが先制ゴールを奪ったことなど、だれも覚えちゃいない。
●オランダの4点目は、カシージャスの足のコントロールミスがすべて。カシージャスは所属チームのレアルマドリッドでは控えキーパーだったのに(カップ戦のみ先発)、代表では正GKなんすよ。そしてレアルマドリッドの正GKのディエゴ・ロペスはスペイン人なのに、このスペイン代表には呼ばれていない。奇妙なことだけど、監督が決めることだから。
●暑かったようなので、フィジカル・コンディションの面でオランダが勝っていた部分も少なからずあったのかも。
●さて、これまで嫌になるほど勝ってきたスペインが大敗したことで、これからどうなるのか、さっぱりわからなくなってきた。わからなくなったのはグループBの行方でもあり、世界のフットボールの趨勢でもあり。グループBのもう一試合、チリvsオーストラリアが引き分けることを全宇宙のスペイン代表ファンが望んだはずである。しかしチリは最終ラインに至るまで背は低いが足元は巧い選手を並べるという志のスーパー高いサッカーを展開して、開始早々アレクシス・サンチェス、バルディビアがあっさりとオーストラリアから2ゴールを奪った。実力差は大きいように見えたが、試合が進むにつれて、フィジカルで圧倒的に勝るオーストラリアがペースをつかむ。ベテラン、ケイヒルが1点を返し、得意の空中戦で体力勝負に。しかし最後はチリが試合巧者ぶりを発揮して、うまく時間を使いながら交代出場したボーセジュールがとどめを刺して3対1。
●今後、スペインが巻き返すにしても、チリとは大きな得失点差がでてきている。スペインのグループリーグ敗退が十分ありえる展開になった。たとえば3試合目にオランダとチリが仲良く引き分けて両者勝ち抜けるという可能性もあると思うのだが、どうだろう。
スペイン 1-5 オランダ
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★★★
チリ 3-1 オーストラリア
娯楽度 ★★
伝説度 ★
(★は5点満点)