●まずは同じアジアの仲間、オーストラリアから。前節スペインを完膚なきまでに叩きのめしたオランダが相手とあって、ほとんどの人がオーストラリアの苦戦を予想したはず。ところがふたを開けてみれば実力伯仲の好ゲームに。前半20分、オランダはロッベンがハーフラインあたりからゴール前まで猛烈な速度で独走して先制ゴール。唖然とするほどの速さ。ほとんど伝説になりかけたゴールだが、その直後、オーストラリアのキックオフからロングボールをケイヒルが鮮やかなボレーでゴールに叩き込んで同点。なんという美しいボレー。ロッベンのスーパーゴールをたった1分で過去の出来事にしてしまった。
●「強豪を恐れない」というのが近年の、そしてとりわけ今大会のテーマ。激しい守備とハードワークを身上にオーストラリアは臆することなく戦った。後半、オーストラリアはPKを得て、逆転に成功。オランダの選手たちの表情に焦りが見えた。もしこのままオーストラリアのリードする時間が長く続けば、この試合は印象深いものになったはず。しかし、後半13分にデパイのスルーパスに抜け出たファンペルシーが同点ゴールを決めると、後半23分にさらにデパイのゴールが生まれて逆転。結局3-2でオランダの順当勝ちに。しかし、アジアのわれわれから見ると、オーストラリアは世代交代に苦労して下り坂をたどっているように思えたチーム。そのオーストラリアの若いチームがオランダをこれだけ苦しめたことに勇気づけられる。少なくとも、あちら側にロッベンとファンペルシーがいたことくらいしか、両者に差はないと信じられる。
●一方のスペイン対チリ。オランダに大敗したスペインは、シャビをベンチに置き、ジエゴ・コスタとペドロ、ダビド・シルバ、イニエスタを先発させ攻撃的な布陣を敷く。ところが、試合開始からチリがゲームを完全に支配する。場内にはチリ・サポーターの圧倒的な声援。ジエゴ・コスタとカシージャスにブーイング。あのスペインがボールを保持できない。パスをつなぐチリ。どっちが「ティキタカ」なんだか。いや、チリは昔から「ティキタカ」を夢見てプレイしていたのであって、今やついにそれにふさわしいタレントを獲得しただけなのかも。オランダ戦の大敗をきっかけに、スペインの魔法が解けてしまったかのよう。いったいどうして、彼らは延々とパスを回し続けることができたのか、今となってはまったく思い出せない。
●前半20分、ゴール前でアランギスのグラウンダーのクロスがバルガスへ。バルガスは目の前のキーパー、カシージャスを柔らかいファーストタッチで交わして、すぐさまスペインのカバーが入る寸前にシュートして先制。前半43分の追加点はフリーキックから。サンチェスのシュートをカシージャスがパンチングで防ぐが、このボールが中途半端でアランギスの足下へ。アランギスがこれを蹴り返して2点目。カシージャスのパンチングはミスだろう。チリのキーパー、ブラボの安定感とは対照的だった。
●2点目を奪われ、スペインの選手たちはますます下をうつむいてプレイするように。とはいえ、前半からチリは飛ばしてきている。後半になって運動量が落ちれば、スペインのウイイレ名人みたいなイジワルなパス回しが復活するのでは? と思っていたが、後半になって中盤が間延びしても、ゲームを支配していたのはやっぱりチリ。前がかりになったスペインに対して、カウンターから3点目を奪うチャンスを何度も迎える。チリは少し決定機をムダにしすぎたかもしれない。後半のアディショナルタイムが6分もあって、なにかが起きる可能性はあった。スペインはフェルナンド・トーレスやサンティ・カソルラといった選手を投入したが、1点が遠い。結局、チリが完勝して、このグループはともに2連勝のチリとオランダの勝ち抜けが早々に決まった。歓喜に包まれるスタジアム。南米で開催するっていうことは、こういうことなんすね。さらば、前回王者。
オーストラリア 2-3 オランダ
娯楽度 ★★★★
伝説度 ★★
スペイン 0-2 チリ
娯楽度 ★★★★
伝説度 ★★★