●今大会目立つのは3バック(=ウィングバックを含めれば5バック)勢の躍進。その3バック対決がオランダ対メキシコ戦で実現。登録上のディフェンダーの枚数でいえばメキシコはなんと7人ものディフェンスの選手が並ぶ。といっても、実態は守備的戦術ともいいがたく、3バックを採用することで、両ウィングバックを高めに配置して、ハイプレスからショートカウンターを狙うという戦術で、得点力を高めているともいえる。両者同じ狙いなのでコンパクトな中盤でボールを奪い合う拮抗した展開に。しかし気温は32度にまで達する暑さで、90分同様のサッカーを続けるのは困難。前後半の30分時点で各3分の給水休憩が設定された。
●前半はお互いカウンターのチャンスが何度かあったものの、相手に大きなミスかあるか、よほど難度の高い攻撃を成功させない限り、ゴールは生まれそうにないという息詰まる展開。ややメキシコが押していたと思う。後半3分、メキシコはクリアボールを拾ったドスサントスがスーパー・ミドルを決めて先制。これで試合が動き出す。
●オランダはフェルハーフを下げてスピードのあるデパイを投入、4-3-3の3トップにして攻勢を強める。これを受けてメキシコもドスサントスを下げてアキノを入れて運動量を確保。後半30分にメキシコはペラルタを下げてエルナンデスを投入、オランダもファン・ペルシーに代えて高さのあるフンテラールをピッチに送った。どんどん選手間の距離が開いてスペースができるにしたがって、ロッベンの突破が増えてくる。メキシコは今大会のスター候補キーパーのオチョアのスーパー・セーブもあり、なんとかそのまま試合を終わらせる一歩手前まで耐えた。しかし、後半43分、オランダのコーナーキックで、フンテラールが頭で落としたところを、それまで攻撃では目立っていなかったスナイデルが豪快なボレーで蹴りこんで同点。さらに後半49分(アディショナルタイムは6分あったが、その内の3分は給水タイムなので実質は3分)、ロッベンがドリブルでエリア内深くまで突進したのに対して、マルケスが足を引っかけてしまいPK。なぜかフンテラールがこれを蹴って、オランダは土壇場での逆転に成功した。
●テレビなのでピッチ全体はなかなか見渡せないんだけど、オランダは状況に応じて細かくフォーメーションを変化させ、特にカイトは左ウィングバックとして先発しながら、右サイドバック、フォワード、右サイドバックと次々とポジションを変えていた模様。監督がプレイを止めることができないサッカーで、これだけ細かく陣形を変化させるファン・ハール監督、恐るべし。中南米勢の躍進を願ってメキシコを応援していた側としては、この容赦のなさがなんとも憎らしい。メキシコの立て続けの失点は、ニッポンのコートジボワール戦を思い出させた。まあ、状況は違うんだけど。
●この日のもう一試合、コスタリカvsギリシャは延長PKまで突入して、コスタリカが勝った。中米勢が生き残ってくれたのは幸い。ギリシャは一人少ない相手に対して攻め続け、同点には追いつけたが、延長で得点にまで至らなかったということで、これもなんだかニッポンvsギリシャを連想させる。
メキシコ 1-2 オランダ
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★