●ディマリアの負傷が痛いアルゼンチン。代役はペレス。イグアイン、メッシ、ラベッシの攻撃陣、控えにはアグエロが負傷から戻ってきた。オランダは5-3-2というか、守備ブロックをがっちりと敷く5バックシステム。おまけにメッシにはデヨングをマンマーク気味につけた模様。攻撃はロッベンとファンペルシーの超人的プレイに頼る低リスク戦略。
●序盤はアルゼンチンがボールを持ち、オランダが跳ね返すという展開だったが、徐々にオランダのキープ時間が長くなってゆく。しかしアルゼンチンも同様に強固な守備で対抗し、守備vs守備の時間帯が延々と続く。後半途中から雨が激しくなる。アグエロは途中出場。しかし選手交代のカードが切られても、展開は変わらない。数少ない偶発的チャンスやセットプレイ以外はほとんど攻め手がない。後半の終盤にイグアイン、ロッベンが決定機らしきものを迎えたが、決めきれず。きわめてチャンスの少ないなかで90分を終えて延長戦へ。
●延長前半早々にオランダはファンペルシーをフンテラールに交代して、3枚目のカードを切った。お、今日はあの××作戦はやらないんだ、PK戦専用キーパーを出すあれは。そりゃそうだよなあ、走れない選手を交代するのが普通だ。しかし、例の作戦が失敗するところを見たかったという気持ちが残って、妙に悔しい。延長に入ってもなかなか得点の気配の感じられない慎重な戦いが続き、最後の最後はお互いにPK待ちみたいな雰囲気が流れていたと思う。ディフェンスマニアが泣いて喜ぶ守備合戦の末に、PK戦へ。メッシはなんどか決定機を演出しかけたものの、歩きながら多くの待ち時間を過ごしていた。
●アルゼンチンのキーパー、ロメロについては今大会ずっとプレイの質がもうひとつだなと感じていた。所属チームのモナコでも控えに甘んじているようだし、いくらでもほかにいいキーパーがいるだろう、と。が、PK戦でロメロは真価を発揮した。オランダの一人目はなぜかフラール(どうやら何人かの選手が一人目のキッカーを断った末に決まったらしい)。ロメロはフラールのキックを見事にセーブ。さらにすごかったのはオランダの3人目、スナイデルを止めた場面。完全にコースを読んで、ドンピシャで止めた。
●一方、コスタリカ戦でPK戦を交代させられたオランダのシレッセン。シレッセンが足元の技術に相当な自信があることはこの試合でも何度かうかがえた。しかしPKは苦手のようで、アルゼンチンの二人目、ガライが度胸だけで真ん中上に蹴ったボールに反応できず、3人目アグエロのキックは的確にコースを読みながら触れず、さらに4人目マキシ・ロドリゲスのかなり甘いコースのキックも反応はしているのに後ろに弾いてしまって、試合終了。なるほど、コスタリカ戦のファンハール監督のPK戦専用キーパー投入の奇策は、そういうことだったのかと、妙な形で納得させられてしまった。シレッセンは11人目のフィールドプレーヤーになれるほどキックも上手いが、PKだけは苦手なわけだ。でもさ、だったら本当に策士なのはロメロを起用し続けたアルゼンチンのサベーラ監督のほうなんじゃないの、と思わんでもない。
●決勝はドイツ対アルゼンチンに。南米が生き残ってくれてほっとした。これって86年メキシコ大会と90年イタリア大会の2大会連続同じ顔合わせになったときの再現じゃないすか。まさにマラドーナが歩んだ道をメッシは歩んでいるのだなあ。しかし、休みが一日多いうえに消耗の少ない試合を戦ったドイツと、120分戦ったアルゼンチンでは、ずいぶんコンディションに差ができそう。せめてアルゼンチンがディマリアとアグエロを先発に復帰させることができれば……と切に願う。
オランダ 0-0 アルゼンチン (2 PK 4)
娯楽度 ★★
伝説度 ★★