●たまたま都響が続いて、3日は「作曲家の肖像」シリーズでマルク・ミンコフスキ指揮のビゼー・プロへ(東京芸術劇場)。前半に交響曲「ローマ」、後半に「アルルの女」組曲第1番&第2番という珍しいプログラム。ミンコフスキが日本のオケを振るのを聴くのは、一昨年7月の金沢でのOEK公演以来。今回もミンコフスキの全身から発せられる熱波が作品に精彩に富んだ表情を与えて、表現のコントラストの強い、躍動感のあるビゼーに。
●「アルルの女」第2組曲で終わるということは最後は「ファランドール」なわけで、なんだか名曲コンサートのアンコールみたいな終わり方だな……と事前に思っていたけど、これが普段はまず聴けないような濃密で狂躁的な「ファランドール」になっていて、目鱗。手垢にまみれたと思われているような「名曲」でも、いくらでも新鮮な音楽になりうるのだと実感する。しかしこれで終わってしまうのはなんだか足りないなと思っていたら、アンコールとして「カルメン」前奏曲、さらに熱狂する客席にこたえて(これは予定外か)「ファランドール」をもう一度。アンコールの「ファランドール」では、本プロにはなかったダイナミクスを即興的に仕掛けて、別の「ファランドール」を楽しませてくれた。すごい。そしてビゼーでまさかの一般参賀あり。
●このプログラム、きっと前半の交響曲「ローマ」で作品の魅力に気づかされたという人が多いんじゃないかと思うんだけど、自分はどうかな。これだけの演奏をもってしても、やっぱりこの曲にはビゼーの迷いみたいなものを感じてしまう。10代で書いた習作の交響曲ハ長調には、あんなにインスピレーションがあふれててまるでシューベルトみたいだったのになあ……。ちなみにミンコフスキは9月にOEKで交響曲ハ長調のほうを指揮する(金沢、東京、群馬で、辻井伸行独奏のラヴェルのピアノ協奏曲他といっしょに)。
August 4, 2014