August 7, 2014

アシモフのタイプライター話

タイプライターのキーは重い●昨日のルロイ・アンダーソン「タイプライター」の話に続けるけど、昔ながらの機械式タイプライターは、PCのキーボードと比べると、かなり強く打鍵しないと正しくキーを打てない。キーを押しこむことでアームがてこの原理で動いて、インクリボンの上から紙に活字を叩きつける。コンサートホールで「パチパチパチパチ」を聞いている分には軽快だが、目の前で打たれるとかなり騒々しい。その後、電動タイプライターのようなキーが軽くて静かな機種もあらわれたが、比較的すぐにワープロ、PCの時代が来てしまったように思う。
●で、思い出すのは大昔に読んだアイザック・アシモフのエッセイだ。いつも旅に出るときにタイプライターを持参していたが(というのも今にして思うとスゴいが)、あるときなんらかの理由でタイプライターを持たずに船旅に出て、しょうがなく手書きで原稿を書いたところ静かなのに驚いた、みたいな話があったと思う(うろ覚え。どこにあったんだっけ?)。タイプライター時代には、書くという仕事は同時にうるさい仕事でもあったわけだ。このあたりの事情は日本語文化にはないので、「手書きで書くことは特別なこと」という環境は想像を超えていると思ったもの。そう考えると、1キロ前後、あるいはそれより軽量な電子デバイスをカバンに入れて持ち歩けば、どこでも(そしてどんな言語でも)原稿が書ける時代が到来したというのは、実にありがたいことである。
●先日、カフェでPCを開こうとしたところ、座席に「キータッチ音などが周りのお客様のご迷惑にならないようご注意ください」と書かれているのが目に入った。想像上のワタシは、持参した機械式タイプライターをテーブルに置いて、力強い打鍵でキーを打ちはじめた。

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「ルロイ・アンダーソンの「タイプライター」」です。

次の記事は「LFJ2015のテーマはPASSIONS(パッション)(仮題)」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ