●昨日、フランス・ブリュッヘンがアムステルダムの自宅で世を去った。享年79。
●リコーダー奏者としてのブリュッヘン。18世紀オーケストラを立ちあげて指揮者になったブリュッヘン。新日本フィルを指揮して数々の印象深い演奏を披露してくれたブリュッヘン。いくつものブリュッヘンの顔が思い出される。
●自分にとっていちばん思い出深いのは18世紀オーケストラとの初来日の頃と、このコンビの録音がフィリップスから続々とリリースされていた時期。なにしろ今と違って、ピリオド楽器のオーケストラによるベートーヴェンやモーツァルトの演奏なんて、まだみんなほとんど聴いたことがなかったわけだから。実演のみならず録音であってもその一枚一枚が新鮮で、リリースが待ち遠しかった。ちょうどメジャーレーベルから次々と大量の新録音がリリースされていた頃で、しかも日本のバブル経済とも重なった。彼らの出現がもう10年遅かったら、その後の展開はぜんぜん違ったものになっていたはずで、今にして思うと「ここしかない」というタイミングだったと思う。
●すみだトリフォニーホールでの新日本フィルとのハイドン、ベートーヴェン他もすばらしかった。ハイドンの「軍隊」とか、笑った。真摯さに加えて、ある種、肩の力の抜けたユーモアも加わって、老匠としてのブリュッヘンを目にすることができた。インパクトの強さでは彼らが初共演した時のラモーとモーツァルト。心底驚いた。
●安らかに。
August 14, 2014