September 12, 2014

フルシャ&都響、ブロムシュテット&N響、ロフェ&OEK

●今週は各団体の秋のシーズンが開幕したこともあって、オーケストラをたくさん聴く週。
●8日は東京芸術劇場でフルシャ&東京都交響楽団のマルティヌー・プロ。マルティヌーの交響曲第4番とカンタータ「花束」という、フルシャならではのプログラム。近年マルティヌーの演奏頻度は着実に高まっている感あり。なかでも交響曲第4番は比較的親しまれている作品だと思う。祝祭的な雰囲気、躍動感にあふれていて好きな曲。でもその楽天的な部分を額面通りに受けとっていいのか、アイロニーを読みとるべきなのか……。後半のカンタータ「花束」は存在も知らなかった曲。事前にアンチェル指揮の音源を軽く聴いてみたところでは、素朴な民族色が前面に出ていて果たして楽しめるかどうか自信がなかったんだけど、実演に触れてみるとどぎついおとぎ話風の歌詞(字幕あり。訳詩も欲しくなる)と合わせて、訴えかける力が強い。オルフの「カルミナ・ブラーナ」を連想させる。初演はオルフのほうが一年だけ先。合唱は新国立劇場合唱団、東京少年少女合唱隊。子供たちが着ていたのは民族衣装? フルシャ&都響は今回も精彩に富んだ演奏を聴かせてくれた。フルシャは都響との首席客演指揮者2018年3月まで延長したとか。祝。
●10日はサントリーホールでブロムシュテット&N響。今回3つの定期公演でモーツァルトとチャイコフスキーの「三大交響曲」をそれぞれセットにしたプログラムが組まれている。まずはモーツァルトの交響曲第39番とチャイコフスキーの交響曲第4番。チャイコフスキーから過剰な情念や感傷を削ぎ落として、エッセンスだけを磨きあげたらこれまでに聴いたことのないような端正な音楽が生まれてきたといった趣き。質実剛健として推進力にあふれ、一般に老マエストロから想像されるような巨匠芸とは縁遠い、清新で覇気に富んだチャイコフスキー。そしてN響の底力を目の当たりにして圧倒される。
●11日はオーチャードホールでオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)。待望のマルク・ミンコフスキとの再度の共演となるはずだったが、残念なことに健康上の理由によりミンコフスキはキャンセル。代役はLFJにも出演したパスカル・ロフェ。本来ならミンコフスキと都響のビゼー交響曲「ローマ」に続いて、こちらではビゼーの交響曲ハ長調が演奏されて「隠しビゼー・シリーズ」みたいになっていたのだが惜しい。もっともこの公演のタイトルは「辻井伸行、ラヴェルを弾く!」。前半はまず辻井伸行のソロでラヴェルのソナチネ、「亡き王女のためのパヴァーヌ」「水の戯れ」が演奏され、続いてラヴェルのピアノ協奏曲、後半にビゼーの交響曲という、ソロも協奏曲もオケも全部聴ける「一粒で三度おいしい」プロだった。快速テンポで開始されたラヴェルの協奏曲は、かなりスリリング。第2楽章のソロは詩情豊か。ビゼーは豪放磊落、筆圧の強さを保ちながら猛然とした勢いで押し切った。ちなみにミンコフスキは今月よりOEKのプリンシパル・ゲスト・コンダクターに就任するということで、本来ならこの日がサプライズのお披露目となるところだった模様。次回の共演は2015年12月。しばらく先。

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