●29日はサントリーホールでインゴ・メッツマッハー指揮新日本フィルへ。前半がベルント・アロイス・ツィンマーマンの「フォトプトシス」と「ユビュ王の晩餐のための音楽」(語り:長谷川孝治)、後半がベートーヴェンの交響曲第7番という魅力的なプログラム。メッツマッハーのツィンマーマン+ベートーヴェンはシリーズ化されていて、7月のツィンマーマン「私は改めて、太陽の下に行われる虐げのすべてを見た」は大評判になっていた(が、聴けず)。「ユビュ王の晩餐のための音楽」は少し前に同じ新日フィルで大野和士がとりあげているにもかかわらず、今回また演奏されることに。ただし今回は語り入り。「上演される国の政治的、文化的状況について」を語るということで、弘前劇場の長谷川孝治が書き下ろしのテキストを読んだ。
●過去の作品の引用だらけの2曲が並んだが、特に「フォトプトシス」で描かれる精緻な響きの移ろいが見事。「ユビュ王の晩餐のための音楽」は歪んだ笑いにあふれた音楽だと思うが、テキストのほうはややテイストの異なる直接的な批評性を持ったもの。趣旨としてはこれで正しいのかもしれない。ただ、もう一段階抽象化された内容、あるいは寓話風のものを予想していた。
●後半のベートーヴェンは随所に仕掛けが施された新鮮な演奏で、弾性に富んだリズムが作品にいっそうの推進力を与えていた。完成度という点では微妙なところもあったかもしれないんだけど、聴きごたえは十分。ただし、思ったほど客席はわかず。というか、空席が目立った。前回のツィンマーマン+ベートーヴェンではそんなことはなかったそうなんだけど。
October 2, 2014