●6日は紀尾井ホールでピエール=ローラン・エマールの「カーターへのオマージュ」。2012年に103歳で亡くなったアメリカの作曲家エリオット・カーターの作品のみを集めたプログラム。
●前半がチェロ・ソナタ(チェロはヴァレリー・エマール。エマールの妹さんで顔がそっくり)と、短いピアノ曲を並べて「再会」「90+」「カテネール」、後半にヴァイオリンとピアノのためのデュオ(ヴァイオリンはディエゴ・トジ)、トリオのために書かれた「12のエピグラム」(アジア初演)。このなかでは初期の作品である最初のチェロ・ソナタがもっとも明快というか親しみやすい作風。続く「再会」「90+」「カテネール」の流れが唯一エマールのソロを聴けるところで、やはりこれは聴きもの。「カテネール」ではジェットコースター的なスリルを満喫。後半のヴァイオリンとピアノのためのデュオは身振りの小さな作品で、自分にはおもしろさを受けとめられず。「12のエピグラム」はエマールのために書かれた2012年の遺作で、ミニチュア的作品の集積。こちらも静的だが、表現の振幅の大きさと一曲の短さという点では近づきやすく、多彩、しかもアンコールで再度演奏してもらえたのが吉。ウィットがあって、上品。カーターのみのプログラムとあって、さすがに客席は埋まらないが、同じプログラムが前日に青森の六ヶ所村でもあって、そっちはどれくらいのお客さんが来場したんだろうか。明日、8日は同じ紀尾井ホールでエマールのバッハ「平均律」第1巻全曲。こちらも楽しみ。
●技術も突きつめればやさしさになる。エマールから立ち昇る香気の甘さ、素材を選ばない自在さ、いかなるときも型崩れしない高機能性。心が洗われる。繊維の奥から匂いも汗もすっきり。
October 7, 2014