●21日は東京オペラシティでダニール・トリフォノフのピアノ・リサイタルへ。今まで録音で少し聴いただけだったんだけど、こんなに強烈なキャラクターの持ち主だったとは。怪物的。前半にバッハ~リストの幻想曲とフーガ ト短調BWV542、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番、後半にリストの超絶技巧練習曲集から10曲を独自の順序で。とくにベートーヴェンの奔放さに絶句。ステージの袖からピアノめがけて一直線にすたすたと歩き、座るやいなや憑かれたかのように没入して鍵盤と格闘する。猛烈に速いテンポや極端なピアニシモを採用した陶酔的なベートーヴェン。あまりにエキセントリックでほとんど戯画的なくらいで、並の演奏なら逃げ出したくなるところなんだけど、ここまで突きつめればもうすべて受け入れられるというか、規範の外側からしか伝えられない領域があると納得できるというか。なにしろ弾ける。アンコールで自作2曲に続いて、自ら編曲した「こうもり」序曲を弾いてくれて、ヴィルトゥオジティ大爆発。客席から思わずあがる女子ブラボー。センセーショナルだった。
●大芸術家の世界とプロレス的大技の世界って背中合わせだと思うんすよね。琴線に触れるのはそのあたりかな、と。
October 22, 2014