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2014年11月アーカイブ

November 28, 2014

2015年 音楽家の記念年

スクリャービン●そろそろ師走。各種媒体はすでに来年の企画なども進めているところであると思うが、恒例、2015年音楽家の主な記念年を以下に。
●作曲家に関してはいちばん大きな話題でもスクリャービンの没後100年くらい。局所的にしか盛りあがってくれなさそうだが、キャラは立っているか。一方、演奏家の生誕100年は来年も豊作で、リヒテル、デル・モナコ、シュヴァルツコップなど。
●ネタとして少しひかれるのはザロモン没後200年か。音楽史では作曲家兼興行主とか作曲家兼楽器製作者みたいな人が非常に重要な役割を果たしてたりするけど、そういう音楽家実業列伝みたいなテーマはおもしろいかも。
●ちなみに「150年」というのは、ぜんぜん引きが弱いし意味も薄いので視野に入れていないのだが、100年単位で人気作曲家が見つからないときに、消去法的に光が当てられることもある。2015年はシベリウス、ニールセン、グラズノフが生誕150年を迎えるのだが、はたして。

[生誕100年]
デイヴィッド・ダイアモンド(作曲家)1915-2005
ヴィンセント・パーシケッティ(作曲家)1915-1987
戸田邦雄(作曲家)1915-2003
カール・ミュンヒンガー(指揮者)1915-1990
ランベルト・ガルデッリ(指揮者)1915-1998
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアニスト)1915-1997
原智恵子(ピアニスト)1915-2001
ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリニスト)1915–2002
マリオ・デル・モナコ(歌手)1915-1982
エリーザベト・シュヴァルツコップ(歌手)1915-2006
エディット・ピアフ(シャンソン歌手)1915-1963
フランク・シナトラ(ポピュラー,ジャズ歌手)1915-1998

[没後100年]
アレクサンドル・スクリャービン(作曲家)1872-1915
セルゲイ・タネーエフ(作曲家)1856-1915
エミール・ヴァルトトイフェル(作曲家)1837-1915
カーロイ・ゴルトマルク(作曲家)1830-1915
近藤朔風(訳詞家)1880-1915

[没後200年]
ヨハン・ペーター・ザロモン(興行主、作曲家)1745-1815

[生誕300年]
ゲオルク・クリストフ・ヴァーゲンザイル(作曲家)1715-1777

[作曲から200年]
シューベルト:「魔王」(1815)

●ひとつ告知を。今週末11/29(土)22:00~ 拙ナビによるFM PORT「クラシックホワイエ」の「この人のこの1曲」コーナーで、フルート奏者の神田寛明さんにご出演いただきました。ラジコプレミアムで全国から聴けます。

November 27, 2014

「戦術リストランテIII  ポスト・バルセロナの新たな潮流」(西部謙司著/ソル・メディア)

戦術リストランテIII●今のサッカー界の最先端を行く戦術をざっと一望できる一冊、「戦術リストランテIII  ポスト・バルセロナの新たな潮流」(西部謙司著/ソル・メディア)。良書。これを読むと、猛烈にサッカーを見たくなる。ほぼ一冊を費やしてテーマとなっているのは、近年のバルセロナが見せた究極のポゼッション・サッカーの次に来るのはなにか、という話。
●ていうか、あのウイイレ名人みたいな美しすぎるバルセロナのサッカーに終焉が来るなんて、そんな現実があるんだろうか。みんな「ポスト・バルセロナ」って言ってるけど、昨シーズンだって最後の一試合で勝ってたらリーグ優勝してたんすよね? それでもサイクルの終わりなんて言われちゃうのか。こんなに偶然性が強く支配するスポーツで、1シーズンでの勝点3なんて誤差みたいなものでは?……と思わなくもないが、「バルサの次」になにが来るかっていうテーマは抗しがたく魅力的だ。
●で、いくつかポスト・バルセロナの類型が挙げられているんだけど、そのひとつは超バルセロナ的なスタイルということで、バイエルン・ミュンヘン、パリ・サンジェルマン、そして対照的なカウンターアタック進化形が、アトレティコ・マドリッド、レアル・マドリッド、ボルシア・ドルトムント。3バックの復権についてもしっかりとページが割かれている。そのボルシア・ドルトムントに香川が復帰した今季、ポスト・バルセロナを目指すどころか降格ラインで苦戦しているのが興味深い。
●本書では現代サッカーの戦術の源流として、ポゼッションを極めるクライフ型のバルセロナと、プレッシング+ラインコントロール+コンパクトネスのアリゴ・サッキ型のACミランを挙げている。後者の進化形が今の高い位置からのプレス+ショートカウンター+ハードワークのサッカーにつながっているわけで、あらためてサッキの革新性を痛感する。両者の違いが端的にあらわれるのは、パックパスに対する考え方。クライフ型ではポゼッションが優先なので、前が詰まっていたら後ろにいったん下げるのが自然だが、サッキ型にはバックパスは自ら陣地を失う不利な選択といった価値観がある。現実の試合ではそうはいってもバックパスも少なくないと思うんだけど、サッカーを「ボールをつないでゴールに入れるゲーム」と考えるか、「ボールをより前に運ぶ陣取りゲーム」だと考えるかの違いは大きい。本質的には後者だと思うんだけど、夢は前者の側にあって、しかもその夢を現実化している(していた?)のがバルセロナ。そういう意味では「ポスト・バルセロナ」時代というのは、甘美な夢から目覚める時代といえるのかも。

November 26, 2014

「コトレシピ」12月号(冬号)、Jupiter連載「ネットで遊ぶクラシック」

「コトレシピ」12月号(冬号)●現在発売中の「コトレシピ」12月号(冬号)での特集記事「今こそ気軽に楽しみたい! クラシック音楽」で、「ナットクのクラシック名曲選」を書いた。他の執筆者に小田島久恵さん、鈴木淳史さん。コーナー冒頭のインタビューに錦織健さん。
●この「コトレシピ」は旅行、ライフスタイル、カルチャーといったテーマで編集されたシニア向けの雑誌で、表紙が八代亜紀だったり、総力特集が「大人の冬は、ゼッタイ沖縄!」だったり、「イマドキの孫事情」という実践的な記事が組まれていたりするのだが、手に取ってみると意外と現役世代にとっても読みでがある。「なるほど、沖縄は夏よりも冬に避寒に行くべし!」とうなずいたり、孫とつきあうための「イマドキ子ども用語事典」を読んで、言葉だけ耳にしていた「トッキュウジャー」とか「アイカツ!」のなんたるかをついに知る。当然のごとくフルカラーで紙面は美麗なんだけど、記事内容は全体に地に足がついているというか、見たくもない夢が売られている感がない。ほどよく元気。
●もうひとつ、大阪のいずみホールの音楽情報誌 Jupter で連載している「ネットで遊ぶクラシック」が、今号で最終回を迎えた。コンサートホールの広報誌なのに、ネット経由での音楽の楽しみ方をテーマにしていたという異例の連載記事で、当初一年のつもりでスタートしたが、二年間続いた。こういったIT系の連載は、日経パソコン PC Onlineでの連載以来久々だったこともあって、自分にとって考えを整理するいいきっかけにもなった。

November 25, 2014

週末Jリーグ、ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団、大井浩明POCヴォルフガング・リームのピアノ曲全曲

●世間は三連休となったこの週末、Jリーグが今季も熱く盛りあがっていた。J1は浦和で決まりだろうと思っていたが、ガンバ大阪が勝点2差まで迫った。毎シーズン毎シーズンよくもこんなに終盤まで優勝争いがもつれるなと感心する。そして昨季の苦い思い出が……。J2は日程終了。1位湘南と2位松本山雅が自動昇格、3位以下の千葉、磐田、山形でプレイオフに。5位の北九州はJ1クラブライセンスを保有しないため、プレーオフへの出場ができないという変則的な形になった。J3はなんとツエーゲン金沢が優勝。2位の長野はJ2讃岐との入れ替え戦へ。金沢も長野も讃岐も少し前まではJFLのクラブだったのに、あっという間にJリーグに行ってしまったのだなあ。
●21日はミューザ川崎でヤンソンス&バイエルン放送交響楽団。前半にツィメルマンの独奏でブラームスのピアノ協奏曲第1番、後半にムソルグスキー~ラヴェルの組曲「展覧会の絵」。ごく当たり前のことのようにオーケストラからものすごい音が出てくる。このレベルにまで来ると、羨望しか感じないというか。第1ヴァイオリンなら第1ヴァイオリンという一台の輝かしい楽器が歌っているかのよう。音響そのものの豊麗さだけで呆然としてしまう数少ないオーケストラのひとつ。「展覧会の絵」はなじみのない音が聞こえる特盛バージョンだった気がする。アンコールにJ・シュトラウスのピツィカート・ポルカとドヴォルザークのスラブ舞曲(何番だっけ?)。
●22日は両国門天ホールで大井浩明 Portraits of Composers 第18回公演「ヴォルフガング・リーム ピアノ曲全曲」。今回も作曲順に従って、リームのピアノ曲第1番から順に第7番まで、さらに「再習作(ナッハシュトゥディー)」が演奏されるという貴重な機会(ピアノ曲第3番は法貴彩子との連弾)。作風は様々だが、「再習作」以外は十数分くらいの長さの比較的短いもの。第3、4、5番、第7番がおもしろかった。第3番は連弾ならではのスリリングさに加えて、特殊奏法ももりだくさん。第7番はダサカッコいい。一通りのプログラムが終わったところで、アンコールは予想外の展開へ。まさかのマーラーの交響曲第7番の終楽章連弾版。オケで聴いても狂躁的な「文脈ぶった切り」感はすさまじいが、連弾で聴くとその過剰さ、直線的な饒舌さが際立つ。これでもうお腹いっぱいだが、さらにもう一曲、「70年代の日本を代表する作品で(笑)……聴けば分かります」と紹介されて、連弾版「ルパン3世のテーマ」。リームのピアノ曲を聴きに行って、帰り道は頭のなかでルパン3世が鳴り響いていたという両国の夜。

November 21, 2014

指揮者の変更。マクリーシュ&都響、マリナー&N響

●20日はサントリーホールでポール・マクリーシュ&都響。本来は9月に逝去したクリストファー・ホグウッドが指揮をする予定だったが、マクリーシュが代役に。少し意外な感じもするがこれが初来日。ホグウッドの凝ったプログラムを、曲目変更なしで乗り切った。
●なにしろコープランドの「アパラチアの春~13楽器のためのバレエ」(原典版)、R. シュトラウスの13管楽器のためのセレナード変ホ長調op.7という2曲を聴けるのが貴重。13楽器という小編成で聴く親密な「アパラチアの春」。そういえばこれは田舎の素朴な花嫁と花婿の音楽なんだっけ。メイン・プログラムはメンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」(ホグウッド校訂版第2稿)。テューバではなく本来のセルパンを使用(蛇みたいな形のあの楽器です)。ホグウッド校訂版にはメンデルスゾーンが初演の直前にカットを施した部分が復元されているそうなんだけど、この復元部分は演奏されないとのこと。もしホグウッドが振っていたらどうなったんだろう……と考えてみてもしょうがないが、とてもおもしろいプログラムであることはまちがいない。本日21日同プログラムで東京芸術劇場でもう一公演あり。「宗教改革」はメンデルスゾーンの交響曲のなかでもっとも感動的な作品だと思う。
●他人が考え抜いたプログラムをそのまま引き受けて初めてのオーケストラを振るのは大変だったと思うが、次はぜひマクリーシュ自身のプログラムも聴いてみたいもの。
●代役指揮者といえば、15日のN響定期も。本来スラットキンが振る予定が、手術のために急遽キャンセル、なんと代役にネヴィル・マリナーが登場した。スラットキン70歳の代わりに、マリナー90歳っすよ! この日は前半がベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(セルゲイ・ハチャトゥリアン)、後半にラヴェルの3曲が予定されていたのだが、後半のみブラームスの交響曲第1番に変更されることになった。さすがにマリナーでラヴェルはないか。ブラームスの交響曲第1番は最近同じコンビで演奏しているし、なんの問題もない。ただ、問題はないけど、ラヴェルを聴きにきたお客さんにとってブラームスはどうなのかなあと思っていたら、すごい音がオーケストラから出てきた。気迫にあふれた重厚なN響のサウンドと、マリナーらしい角の取れた温かみのある音楽が一体となった、円熟のブラームス。客席の喝采にも老巨匠への敬意という以上の熱さがあったはず。

November 20, 2014

ニッポン代表vsオーストラリア@キリンチャレンジカップ

オーストラリア●ようやく録画を見た、ニッポン代表vsオーストラリア。アジア・カップ前の最後の親善試合、しかも相手はオーストラリア。普通に考えれば、アギーレ監督は可能な範囲でアジア・カップ用のベストメンバーを先発させそうなもの。ホンジュラス戦と同様、ザッケローニ時代に戻ったようなメンバーが組まれていた(内田はコンディション不良で使えず)。GK:川島-DF:酒井高徳、吉田、森重、太田宏介-MF:長谷部-遠藤(→今野)、香川-FW:本田、岡崎(→豊田)、武藤(→乾)。
●注目は中盤の形。長谷部をアンカーに置いて、その前に遠藤と香川が並ぶ4-3-3はアギーレ流。この形だと長谷部が最終ラインまで下がってビルドアップに加われる。前線からのプレス→ショートカウンター全盛の今の時代、最終ラインからひとつ前にボールを運ぶのもただではさせてもらえないわけだが、だったら最終ラインに配給力のある選手を置いて、なるべくゴールに近い位置まで一気にボールを送りたくなる。そんな事情もあって、最近ではすっかり3バックが復権したり、4バックでもアギーレのようにアンカーを最終ラインからの組み立てに参加させたりしているという認識。
●前半、ボール支配率ではオーストラリアが上回ってしまう。ここが微妙なところで、だからオーストラリアのペースで試合が進んだとも見れる(ら抜き)だろうし、それでもゲームを支配していたのはニッポンなんじゃないかなという見方だってあるだろう。ニッポンはポゼッションではなく、カウンター狙いの戦略だったわけだから、相手がいくらボールを回しても、ディフェンスを崩されなければゲームプラン通りであって、実際に崩されてもいなかった。しかし、この展開をアギーレは気に入らなかった模様で、前半の終盤から中盤の形を変えてきた。アンカーを置かず、長谷部と遠藤をボランチに並べて、香川をトップ下に置く、4-2-3-1へ。なんと、メンバーだけではなくフォーメーションまでザッケローニ・ジャパンに戻ってしまった!
●しかもこれが功を奏するんだな。後半は遠藤を今野に交代させて、そのままダブルボランチ。ボールが回りだし、香川もプレイしやすそう。後半16分、本田のコーナーキックからファーでフリーの今野がヘディングで決めて先制。コーナーキックでファーサイドにだれもディフェンスがいなかったんだから、これはオーストラリアのチョンボ。後半23分はなぜか右サイドの高い位置まで森重が上がり、意外すぎる技巧的なドリブルで相手を抜き去り、マイナスのクロス、これを中央で岡崎がヒールで合わせるというこれまた予想外に華麗なプレイで決めて、2点目。森重は以前の試合でもクレバーな足技を披露してくれたっけ。どんなセンターバックなの。
●オーストラリアは終盤にニッポンの天敵(でもベテランになった)ケイヒルを投入。するとこの采配が的中して、ロスタイムに左サイドからベヒッチが入れたボールにどんぴしゃでケイヒルが頭で合わせてゴール。ニッポンの集中力が欠けたのか、ベヒッチにだれもつけずフリーで上げさせてしまったところ、教科書通りに2枚のセンターバックの間にケイヒルに飛びこまれた。
●この試合でいちばん印象に残ったのは、オーストラリアは変わりつつあるな、ということか。世代交代が進んだだけではなく、フィジカルの強さや高さに依存しない、ボールをつなぐスタイルを身に着けつつある。まだモデルチェンジ中なんだろうけど、ホスト国となるアジア・カップをきっかけにぐっと完成度を高めてきそうな予感。

November 19, 2014

METライブビューイング2014/15 モーツァルト「フィガロの結婚」

●映画館で観るオペラ、METライブビューイングの今季2作目は「フィガロの結婚」。レヴァインの指揮にひかれて足を運んだが、期待以上に完成度の高い舞台だった。リチャード・エアの新演出は、舞台を第二次世界大戦前、1930年代に設定している。と聞くと、「軍隊に行け!」といわれる美少年ケルビーノの運命が気になるわけだが、ふたを開けてみるとそんなところに重点は置かれていなくて、まったくもって正攻法で細部まで練られたラブコメ。もうホントに完璧なラブコメ。力のある演出家が豊富なリソースを使って作りあげた舞台だけあって、ちゃんと笑える(客席も笑ってた)。これがいちばん難しいんすよね、愉快であるってことが。
●キャストはイルダール・アブドラザコフ(フィガロ)、ペーター・マッテイ(伯爵)、マルリース・ペーターセン(スザンナ)、アマンダ・マジェスキー(伯爵夫人)、イザベル・レナード(ケルビーノ)。スザンナもキュートだし、伯爵夫人も美しい。フィガロが少々太目ではあるものの、みんな容姿も役柄にあっていて、恰幅のいい中年男女が絡み合うドスコイオペラになっていないのが吉。回り舞台を活用した舞台転換から歌手の動きから全般にスピード感があって、穏健であってもかび臭くない。それに合わせたものなのか、レヴァインのテンポもきびきびしていて聴き惚れる。
モーツァルト●しかし、「フィガロの結婚」って、何回見ても話が途中からグダグダになっていると思う。モーツァルトの最高傑作かもしれないのに、そしてオペラ史上の最高傑作でもあるかもしれないというのに、この話の「イラッ」とさせる感って、なんなんすかね。初夜権を巡る騒動というストーリーはいいんだけど、「化かし合い」モードに入って以降のプロットが納得いかない。これって整合性がとれてるのかなあ? フィガロが実はマルチェリーナとバルトロの間に生まれた子供でしたっていう展開は、もう絶望的に終わっている。それなのに、史上最強の傑作だと確信して心の底から楽しめる。どんだけスゴいの、モーツァルトの音楽は!
●「フィガロの結婚」で唯一共感できる人物はアルマヴィーヴァ伯爵だと思う。彼は嫉妬深い小人物で、賢くもなければ寛大でもないんだけど、初夜権廃止とか、前日譚「セビリアの理髪師」での身分を隠しての恋とか、意識高い系の領主になりたくてしょうがない。フィガロやスザンナはファンタジーだけど、アルマヴィーヴァは現実。
●字幕もいい。「ババア!」のところは秀逸。
●ケルビーノの「壁ドン」演出とかあってもいい気がする。

November 18, 2014

オノフリ&チパンゴ・コンソートでヴィヴァルディ「四季」

●16日は石橋メモリアルホールでエンリコ・オノフリ&チパンゴ・コンソート。「ヴェネツィア、霧の中の光」と題したオール・ヴィヴァルディ・プロ。前半に協奏曲集「調和の霊感」から第1番、第8番、第9番の3曲と弦楽のためのシンフォニア ロ短調「聖墓によせて」、後半に協奏曲集「四季」。満席の盛況ぶりで、LFJ後にオノフリが単身来日したころとは隔世の感。継続する力の大きさを痛感する。「四季」は以前にも一度同じオノフリ&チパンゴ・コンソートで聴いているが、同じものをもう一度聴いたという「再放送感」がまったくない鮮度と躍動感。鋭くアグレッシブな表現も健在だけど、のびやかな歌が横溢したヴィヴァルディでもあり。「四季」の描写性、鳥のさえずりやヴィオラ犬のバウバウ、秋の酒宴とまどろみ、吹き荒れる嵐など、雄弁で痛快。オノフリとアンサンブルの一体感も驚異的。
●ヴィヴァルディが用意した「四季」のソネットって、季節の情景描写が中心なんだけど、ちゃんと主人公がいるんすよね。最初は遠いところから三人称視点で描いているようでいて、「冬」あたりになると歯をガチガチさせながら凍えて、「でもさー、実は冬も楽しんだよねー」って強がってみせる(?)一人称の主人公の存在を感じさせる。そういう微妙な視点の移動が、音楽にも含まれているんじゃないかなって感じることがある。

November 17, 2014

ニッポンvsホンジュラス@キリンチャレンジカップ

ホンジュラス●着実にザックジャパンに戻った。戻ったら、強くなった。14日のニッポン代表戦は豊田スタジアムで対ホンジュラス代表。ここまで新戦力をサプライズ招集してはダメ出しを繰り返してきた感のあるアギーレ監督だが、ついに遠藤、長谷部、内田、今野らザッケローニ・ジャパンの選手たちを呼び戻してしまった。いや、いいんすよ、遠藤でも。4年後は絶対にいないと思うけど、アジア・カップは年明けなんだから。アジア・チャンピオンになるためには4年後より、今使える選手を。今までの数試合はなんだったんだとは思うけど。
●GK:川島(→西川)-DF:内田、森重、吉田、酒井高徳-MF:長谷部(→田口)、遠藤(→柴崎)、香川-FW:本田、岡崎(→豊田)、武藤(→乾)。酒井高徳を左サイドバック、岡崎をトップで起用。武藤を別とすれば、メンバー的には安定のザック・ジャパン。なにがスゴいかといえば中盤。これまではアンカーに森重を置いて、その前に細貝と田中みたいな感じで、すごく守備重視というかカウンターを念頭に置いていた。森重も細貝も一列前で使われている感があった。それがこの日はアンカーになんと長谷部。これまでとは一転して、前の選手を後ろで使ってポゼッション重視に。攻撃的な布陣がしっかり実を結んで、近頃じゃ親善試合でも珍しい6対0。ゴールは吉田、本田、遠藤、乾、豊田、乾。それにしてもホンジュラス、ここまで準備不足のチームとは。
●アギーレ色を感じるのはアンカー。ビルドアップの際には長谷部がディフェンス・ラインに入って、3バック調になる。これは森重のときも同じで、今風というか。最終ラインから長谷部、森重がボールの供給役になれるし、両サイドを高い位置からスタートさせられる。でも、このクォリティのホンジュラスが相手だと、果たしてどれだけ効果的なのかはなんともいえないというか。
●サッカーは相手あってのことだから難しい。若い選手でブラジルと戦ったらコテンパ(死語)にやられた。実績豊富なメンバーでホンジュラスと戦ったらお祭りになった。じゃあ、実績豊富なメンバーのほうがいいかといったら、そんなはずはないわけで。このメンバーでブラジル相手だったら、もっとやられていたかもしれない。若い選手もホンジュラス相手なら大差で勝ったかもしれない。アギーレは就任以来、一貫性のない選考によって、答えのない問いを発し続けている。次のオーストラリア戦にどんなメンバーを用意したら、答えがみつかるのだろうか。

November 14, 2014

マレイ・ペライア&アカデミー室内管弦楽団のモーツァルト、ハイドン他

●13日はマレイ・ペライア&アカデミー室内管弦楽団へ(サントリーホール)。オケのみでメンデルスゾーンの弦楽のための交響曲第7番、弾き振りでモーツァルトのピアノ協奏曲第21番、バッハのピアノ協奏曲第7番ト短調、ハイドンの交響曲第94番「驚愕」というプログラム。弾き振りのピアノの配置は通常のリサイタルなどと同じく横向き、蓋もあり。快活で、洗練されていて、でも案外ハイテンションなペライアのピアノを満喫。モーツァルトの第21番の耳慣れないカデンツァは、第1楽章がペライアの自作、第3楽章がブゾーニ。バッハは譜面あり、譜めくりあり。「驚愕」でようやく指揮棒を持ったペライアが登場。生まじめで精悍なハイドンだったけど、予想以上に楽しい。メリハリのあるティンパニがすごく効いていた。「驚愕」という選曲は悪くないんだけど、これを聴くともう一曲くらいハイドンを聴きたくなる。といっても時間はもう十分なので、終演するしかないわけだが。アンコールはなし。
●「驚愕」第2楽章はもうだれもびっくりないから、「びっくりシンフォニー」は「びっくりしないシンフォニー」になっている。ミンコフスキのようにあそこで沈黙するとか叫び声を挙げるという「超びっくりシンフォニー」もあったが、もうそこまでいくとそれ以上の「びっくり」は手品でもしないと難しそう。
●週末、N響をスラットキンが指揮する予定だったのだが、スラットキンが健康上の理由でキャンセルして、90歳のマリナーが急遽代役で登場することになった。たまたまアカデミー室内管弦楽団の創設者マリナーが、この日東京に居合わせることになったわけだ。ワタシは見ていないんだけど、客席にはマリナー翁の姿もあったとか。
●「びっくりシンフォニー」のあそこでペライアがマリナーに早変わりしてたら史上最強のびっくりだった。あれっ!? あの人マリナーだよ!(ざわ…ざわ…)みたいな。あるわけない。

November 13, 2014

ロマンティッシュが止まらない

●12日はサントリーホールで佐渡裕指揮東京フィル。佐渡さんを生で聴くのは久々かも。ハイドンの交響曲第6番「朝」とブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。前半のハイドンは弦楽器8型のコンパクトな編成で軽快。後半のブルックナーは明快で鮮やか。とても共感できる。鬱蒼とした森みたいじゃないブルックナー。白色LEDでくっきりと隅々まで照らしたような健やかなブルックナー。そうそう、こういう神様がいないブルックナーを聴きたかったのでは。好き嫌いが分かれそうなブルックナーだからどうなるかなと思ったけど、客席の反応は良好。ブルックナーを教会から引っ張り出して、天日干しにしてみたい。
●ブルックナーで指揮台でジャンプした指揮者をはじめて見たかも。一瞬、控えめに。
●タワレコだったっけ? かつてブルックナーのCDに「神が見える!」の手書きPOPを添えたのは。あれは秀逸だった。16bitで量子化された神。

November 12, 2014

ジョヴァンニ・アントニーニの「ハイドン2032」

ジョヴァンニ・アントニーニの「ハイドン2032」●ジョヴァンニ・アントニーニがハイドン交響曲全集の録音を開始した。第1弾はイル・ジャルディーノ・アルモニコを指揮しての交響曲第39番、第49番「受難」、第1番。これにグルックの「ドン・ジュアン」が付く。全集ではイル・ジャルディーノ・アルモニコだけではなく、バーゼル室内管弦楽団も演奏を担うということなので、同一指揮者の全集ではあるけど、同一オーケストラではないということになる。
●で、これってハイドン生誕300年の2032年までに全集を完成させるっていうんすよ。2032年って! 今から18年後なわけで、まるで惑星探査機を飛ばすみたいなスケール感。果たして無事に目的地まで付くのであろうか。ジョヴァンニ・アントニーニって何歳だっけと思って調べてみたら、1965年生まれだった。みんな元気で。そして、資金が続きますように。
●18年がかりなんだから、完成する頃にはCDは太古の昔のレガシーメディアになっているはず。ダウンロード販売もとっくに廃れていて、ストリーム配信だけが生き残っているというイメージだろうか。それともさらにその次のなにかに移行しているのか……。いや、案外、日本だけはCD王国が続いていて、激安ボックスになって店頭に並んでたりして。
●とりあえず第49番「受難」から聴いてみたところだけど、切れ味鋭く、雄弁。すばらしい。プロジェクト第1弾でいきなり「受難」っていうのもどうかと日本語的には思うが、これは「パッション」なわけだ。あ、もしかしてこの曲、来年のラ・フォル・ジュルネのプログラムに入る!?

November 11, 2014

ゴールライン・テクノロジー、アギーレ・ジャパン

ゴールライン●先週末のプレミアリーグ、リヴァプール対チェルシーは1対2でチェルシーの逆転勝利。チェルシーの同点ゴールは、ボールがゴールを割ったかどうか微妙な場面になったが、主審はすぐにゴールを宣言した。リヴァプールの選手からもほとんど抗議は出ない。だって、ゴールライン・テクノロジーがあるから。ハイライト動画でもわかるように、キーパーのミニョレがボールをキャッチしながらそのままゴールラインを割ってしまっている。ここまで明白にゴールが確認されてしまうとなると、もう主審に抗議するのもカッコ悪い。いやー、なんてすっきりするんだろう。抗議でムダな時間も費やされないし、フェアだし。さらば、「幻のゴール」。ビバ、テクノロジー。
●ニッポン代表は11月14日と18日にホンジュラスおよびオーストラリアと戦うわけだが、アギーレ監督の選んだメンバーを見ると遠藤や今野、豊田、内田らが復帰していて、着々とザック・ジャパンに戻りつつある感も。ついファルカン・ジャパンの悪夢を思い出してしまうが、監督なりの深慮があるのだと願うしか。
オーストラリア代表の左サイドバックでイングランドのWBAに所属するジェイソン・デーヴィッドソンは成立学園高校サッカー部の出身。お祖母さんが日本人なんだとか。今回のオーストラリアのメンバーを見ると、一頃よりヨーロッパでプレイする選手がまた増えてきたようで、手強そう。

November 10, 2014

パッパーノ指揮ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団など

●7日はサントリーホールでアントニオ・パッパーノ指揮ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団。ヴェルディの「ルイザ・ミラー」序曲、ドヴォルザークのチェロ協奏曲(マリオ・ブルネロ)、ブラームスの交響曲第2番というプログラム。こういうプログラムでも、このオーケストラらしさは全開。明るい響きと伸びやかなカンタービレで描かれたブラームスは本当に楽しい。実演ではあまりいい記憶がないドヴォルザークのチェロ協奏曲も、ブルネロの渾身のソロと細部まで表情豊かなオーケストラがあいまって、すっかり満ち足りた気分に。前回の来日公演でもまったく同じことを感じたけど、このオーケストラは個々のプレーヤーから「モテたい」オーラがびゅんびゅんと発散されているのが吉。聴かせどころでは腕まくりして「オレがオレが」って前に出てくる感、満載。ソリストのアンコール2曲、オケのアンコール2曲。大盛りあがりで終了。会場は満席ではなかったけど、パッパーノのソロ・カーテンコールに対するブラボーの声の盛大さは最近の公演では随一。愛されてる。
●9日は本当なら横河武蔵野FCのJFL今季最終節に足を運びたかったのだが、天気がもうひとつなのと意外と肌寒いのとで断念。東京の11月上旬に寒いなどと言ってるようではどうしようもないわけだが……。そういえば今年から始まったJ3リーグも結局観戦できないままあとわずか。首都圏でJ3を見ようと思ったら、実は意外と選択肢はいくつもあって、FC町田ゼルビア、SC相模原、Y.S.C.C.横浜の3チームがありうる。どこも行けるといえば行けるし、どこも同じくらい遠いといえば遠い。3チームとも11/23の最終節はアウェイなので、残すは11/16しかない。うーむ。そしてJ3でなんとツエーゲン金沢が優勝してしまいそうなのだがっ!

November 7, 2014

ティル・フェルナーのリサイタル、10代のためのプレミアム・コンサート~小菅優&河村尚子ピアノ・デュオ

●5日はトッパンホールでティル・フェルナーのピアノ・リサイタル。前半にモーツァルトのロンド イ短調、バッハの平均律クラヴィーア曲集第2巻から第5番ニ長調~第8番嬰ニ短調、ハイドンのソナタ ニ長調、後半にシューマンのダヴィッド同盟舞曲集。滑らかなレガートを拒みながら、強めの音圧で点と点を結んでいくような緊張感の高いモーツァルトで開始され、玄妙なバッハを経て、がらりと雰囲気を変えて快速テンポではしゃぎまわるハイドン。コントラストの鮮やかな前半だけでもかなりの充足度。後半のシューマンは詩情豊か。しみじみと聴き入る。アンコールにリストの「巡礼の年 第1年 スイス」から「ワレンシュタット湖畔で」。満喫。
●ダヴィッド同盟舞曲集って、最後から2番目の第17曲でひとまず終わる曲集だと思う。淡々と紡がれる歌のなかから第2曲が回想されて、いったいどこに行くのかなと思ったところで、白昼夢から目覚めさせるような終結部が続く。おしまいの第18曲は余韻の実体化。
●4日はソニー音楽財団の「10代のためのプレミアム・コンサート~小菅優&河村尚子 ピアノ・デュオ・リサイタル」を取材(紀尾井ホール)。6歳から10代まで、およびその保護者が入場できるというシリーズの第5弾で、毎回登場する楽器が違っていて、今回はピアノ・デュオ。小学校低学年のお子さんと親御さんという組合せもあれば、高校生の友人同士みたいな来場者もあって、客席はかなり多様。なんだかまぶしい、若さが。モーツァルトの2台ピアノのためのソナタ ニ長調、シューベルトの幻想曲 ヘ短調、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」、ラフマニノフの2台ピアノのための組曲第1番「幻想的絵画」という本格的なプログラム。ラフマニノフは圧巻。さすがにシューベルトの幻想曲で喜ぶ子供たちというのはあまりいないと思うんだけど、お父さんお母さんはじわりと来ていたかもしれない。

November 5, 2014

「Jリーグの戦術はガラパゴスか最先端か」(西部謙司著/東邦出版)

●自分がサッカーを見始めたときにいちばん魅力を感じたのは「ゴールが生まれるまでの型がないところ」だった(ホントはあるかもしれないけど)。意図がぴたりとかみ合って複雑な手順をたどってようやく生まれる場合もあれば、ロングパス一本で簡単に訪れる決定機もある。その「型がないこと」を、今の自分の言い方でいえば「戦術が多様である」っていうことになるんだと思う。
Jリーグの戦術はガラパゴスか最先端か●で、そんなサッカーの戦術のあれこれをJリーグを例に教えてくれるのが、「Jリーグの戦術はガラパゴスか最先端か」(西部謙司著/東邦出版)。具体例満載で、読みやすくておもしろい。というか、おもしろい戦術本って、「読み物」になるんすよね。戦術本にはアマチュア指導者向けの解説書という実需もあると思うんだけど、そっちのほうではなくて。ペトロヴィッチが広島と浦和で作りあげたスタイルがいかに世界でもまれに見るユニークなものなのか。オシムがJEFで成し遂げたのはなんだったのか。結果がぜんぜん出なくて忘れ去られてしまってるけどバルセロナからやってきたレシャックが横浜フリューゲルスでやろうとしていたことがどれだけ先進的だったのか。史上最強の磐田のN-BOXとはなんだったのか。これは戦術で振り返るJリーグ史でもある。
●目ウロコだったのは、Jリーグは「戦術的に冒険しやすい環境なのかも」という指摘。個の力で圧倒できるビッグクラブなら特異な戦術を敢行するより選手の能力で戦ったほうが安全に勝てるけど、どんぐりの背比べみたいなJリーグなら独自のアイディアによる戦術で戦う価値がある、と。あと、「ゲームにおいて戦術の占める割合はせいぜい2、3割」という指摘もまったく同感で、戦術的な成熟度を深めたチームがほとんど個の力だけで戦ってるみたいなチームにコロッと負けたりするのもサッカー。この「せいぜい2、3割」っていう配分の絶妙さが、サッカーという競技の魅力の源泉なんじゃないかとすら思う。

November 4, 2014

METライブビューイング2014/15 ヴェルディ「マクベス」

●映画館で観るオペラ、METライブビューイングの新シーズンが開幕。今季第1弾はヴェルディの「マクベス」。アンナ・ネトレプコ(マクベス夫人)、ジェリコ・ルチッチ(マクベス)、ルネ・パーペ(バンコー)、ジョセフ・カレーヤ(マクダフ)というキャストで、指揮はファビオ・ルイージ。ネトレプコが圧倒的で、パワフルかつ禍々しい。幕間インタビューでネトレプコが見せた「クレイジーな地のキャラ」が、そのままマクベス夫人のキャラクターにどこかで通じているような。貫禄。そして、頼まなくてもご飯を大盛りにしてくれる食堂のオバチャン感は健在。11月7日(金)まで上映。
●ヴェルディの「マクベス」って、ハイテンションな場面が続いて、山あり山あり、なんすよね。原作の諸要素をオペラの枠内に収めようとして窮屈になったと見るべきなのか、もともとロマンス要素のない話なのでどうしてもこうなると見るべきなのか。しかし、なんといってもこれは「マクベス」。物語が聴衆を引きつける力は尋常じゃない。「女から生まれた者にはマクベスを倒せない」っていうあれはホントに鳥肌モノ。
●ネトレプコの鬼女っぷりが凄絶だからなおさら思うんだけど、この話で権力を渇望しているのはマクベス夫人だけなんすよね。夫をそそのかして王位につかせて、「ハハハ、これが王座だ!」みたいな勝ち誇ったことを歌うけど、王になったのは夫であって、マクベス夫人はどこまで行っても王にはなれない。だって女に生まれてしまったから。夫よりマッチョな女がマクベス夫人。マクベス夫人の男性性に屈して、マクベスは自らの手を汚したともいえる。そしてマクベスを倒すのはマクダフ。ヴェルディのオペラでは途中からいきなり出てきた唐突な役柄にも見えるんだけど、マクダフは帝王切開で生まれているので、女から生まれていない。母性を否定して(おそらく母体を犠牲にして)生まれたマッチョがマクベスを倒す。マクベスは男性性に二度殺されている。
ヴェルディ●本来、魔女は3人だし、3人という人数には意味があると思う。でもヴェルディは魔女に合唱をあてたので、このオペラでは集団になる。ポランスキーの映画「マクベス」の3人の魔女のような、外道というか異界の存在という感じではない。ワーグナーのラインの乙女の3人とか、ノルンの3人みたいに3人で歌わせないで、合唱にしたっていうのはなにか明確な理由があったんすかね?
●魔女の予言はマクベスに向かって「お前はいずれ王になる」、バンコーに向かって「お前は王にならないが、子が王になる」。後者の予言の行方については、この物語のなかでは明示的に描かれていない。なので演出上で利用可能な設定になる。このエイドリアン・ノーブルの演出では、最後の場面で、ダンカン王の息子マルコム(原作と違ってもう一人の息子ドナルベインは登場しない、たぶん)が戴冠してハッピーエンドとなったところで、脇にバンコーの息子フリーアンス(ヴェルディのオペラでは名前はなかったかも)がいるのに気づいてギクリとして一歩退く、といった形になっていた。
●日本の魔女は少女になりがちだけど、西洋の魔女はたいてい老婆。

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