●5日はトッパンホールでティル・フェルナーのピアノ・リサイタル。前半にモーツァルトのロンド イ短調、バッハの平均律クラヴィーア曲集第2巻から第5番ニ長調~第8番嬰ニ短調、ハイドンのソナタ ニ長調、後半にシューマンのダヴィッド同盟舞曲集。滑らかなレガートを拒みながら、強めの音圧で点と点を結んでいくような緊張感の高いモーツァルトで開始され、玄妙なバッハを経て、がらりと雰囲気を変えて快速テンポではしゃぎまわるハイドン。コントラストの鮮やかな前半だけでもかなりの充足度。後半のシューマンは詩情豊か。しみじみと聴き入る。アンコールにリストの「巡礼の年 第1年 スイス」から「ワレンシュタット湖畔で」。満喫。
●ダヴィッド同盟舞曲集って、最後から2番目の第17曲でひとまず終わる曲集だと思う。淡々と紡がれる歌のなかから第2曲が回想されて、いったいどこに行くのかなと思ったところで、白昼夢から目覚めさせるような終結部が続く。おしまいの第18曲は余韻の実体化。
●4日はソニー音楽財団の「10代のためのプレミアム・コンサート~小菅優&河村尚子 ピアノ・デュオ・リサイタル」を取材(紀尾井ホール)。6歳から10代まで、およびその保護者が入場できるというシリーズの第5弾で、毎回登場する楽器が違っていて、今回はピアノ・デュオ。小学校低学年のお子さんと親御さんという組合せもあれば、高校生の友人同士みたいな来場者もあって、客席はかなり多様。なんだかまぶしい、若さが。モーツァルトの2台ピアノのためのソナタ ニ長調、シューベルトの幻想曲 ヘ短調、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」、ラフマニノフの2台ピアノのための組曲第1番「幻想的絵画」という本格的なプログラム。ラフマニノフは圧巻。さすがにシューベルトの幻想曲で喜ぶ子供たちというのはあまりいないと思うんだけど、お父さんお母さんはじわりと来ていたかもしれない。
November 7, 2014