●8日昼はミューザ川崎のホワイエで東京交響楽団2015年度シーズン記者会見。前日にマーラー「千人の交響曲」公演を終えたジョナサン・ノットが登壇。最初に大野順二楽団長の挨拶があった。「(昨日の公演を成功裏に終えて)今とても幸せな日々を過ごしている。楽員一同、音楽監督が来る前はそわそわする」と、ノットへの期待と共感が語られた。
●就任会見でも感じたことだけど、ノットの話は明快で、型にはまっていない。自分と楽団との旅の現在地点をまず語ることから始めたいとして、まずは前日の「千人の交響曲」のリハーサルについてから。「オーケストラの音楽作りには感銘を受けた。日本人音楽家たちの典型的な良さがあらわれていて、技術的に高く、だれもがリハーサルに集中して臨み、自分の要求にもすぐにこたえてくれる。次のリハーサルになっても、前回での指示をしっかりと覚えていてくれる。これらはヨーロッパの楽団にはない美質。そしてこのオーケストラでもっともすばらしいと感じたのは、感情的な表現についての成長ぶり。ひとつひとつの公演に情熱を持って取り組みたいし、コンサートは決して昨日のリハーサルの繰り返しであってはならない」「ゲネプロの前のリハーサルは技術的な精度も高く、音程も正確で、本当に音がそろっていた。しかし私にとっては、安全すぎる演奏でもあった。感情を伝えるより、音をそろえることが優先されていた。そこでゲネプロではいろいろなことを試してみた。するとオーケストラはばらばらになる。でもそこに生まれる強さ(インテンシティ)や集中度にこそ、まさに音楽がある」。
●「千人の交響曲」の公演を大成功だったと振り返りつつ、さらなる成長を続けるためのレパートリーを選んだとして、来季のラインナップが紹介された。年間パンフレット(PDF)にあるように、ノットは来年6月にR・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」+ブルックナーの交響曲第7番、7月にベートーヴェンの交響曲第5番他、9月にマーラーの交響曲第3番、11月にリゲティの「ポエム・サンフォニック」+ショスタコーヴィチの交響曲第15番他等を指揮。レパートリーの幅広さが反映されたプログラムで、それぞれにテーマ性なり意図なりが込められているが、全体としては「生と死」というテーマでゆるやかにくくられている。
●ノットが来季特に求めていきたいとして挙げたのは、ソノリティ(響き)、そしてヴィルトゥオジティ。ソノリティについてのひとつの例として、たとえば同種の管楽器間でのバランスについて、「1番奏者は大きく、2番奏者は少し小さく、3番奏者はもっと小さく演奏するという伝統的なヒエラルキーが順守されているけれど、その逆を求めた。すると演奏そのものががらりと変わった」という話が紹介されていた。
●ノットの会見って、中身の濃い「プレゼン」っていう感じがして、出席するかいがある。今にもパワポのスライドが出てきそうな勢いで。出てこないけど。
December 10, 2014