●イタリア生まれのフランスのピアニスト、アルド・チッコリーニ逝去(1925-2015)。89歳。
●自分のなかではチッコリーニは二人いる。一人はEMIに精力的なレコーディング活動を行なったピアニスト。もう一人は日本にもたびたび訪れて滋味豊かな音楽を紡ぎ出した老巨匠。
●写真は2011年に取材したフランスのラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ・フェスティバル(ルネ・マルタンがLFJより前から開いている音楽祭)。チッコリーニは井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢と共演して、ひとつの公演でベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番とシューマンのピアノ協奏曲を立て続けに演奏した(その後にさらにベートーヴェンの交響曲第7番が続くというもりだくさんの公演だった)。86歳を間近にしたチッコリーニは、リハーサルでは杖を突いてあらわれたが、本番ではしっかりとした足取りで登場し、ひとたび鍵盤に向かうと矍鑠とした力強さで年齢を超越した音楽を聴かせる。2曲の協奏曲が終わった後、野外劇場に集った満員の聴衆は総立ちになって老大家を称えた。終演後、ルネ・マルタンは「フェスティバル30年の歴史で十指に数えられる美しいコンサート」と語っていた。
February 3, 2015