●以前、当欄で注目していた、サッカー非公式世界王者(UFWC)というタイトルを覚えているだろうか。これはサッカー界にボクシングと同様のチャンピオンベルトがあったとしたら、今どこがチャンピオンかというのを(フットボール的に)有史以来たどっている仮想タイトルだ。つまり、公式戦だろうが親善試合だろうが、チャンピオンを倒した国が新チャンピオンになる。引分けなら現チャンピオンが防衛する。では、今、この非公式世界王者のタイトルを保持している国は?
●ニッポンは2010年10月、ザッケローニ時代にこのタイトルをアルゼンチンから奪い、15試合にもわたって王者の座を防衛した。ニッポン代表が誇るべき(ニセ)タイトルなのだ。しかし、不覚にもザック・ジャパンが11年11月に北朝鮮に敗れてしまい、チャンピオンベルトははるか平壌に行ってしまった。北朝鮮はニッポンと違って強豪国との親善試合もなさそうだし、しばらくチャンピオンベルトはあの国から外に出ることはなさそうだと案じていたわけだが、案の定、北朝鮮は12試合にわたってタイトル防衛に成功した(フィリピンとかタジキスタンとかインドネシアを下しながら)。ようやく2013年1月、北朝鮮はスウェーデンと対戦し、PK戦で敗れた。長く東アジアから出てこなかったチャンピオンベルトは、ついに北欧へと脱出した。
●そして、現在。なんと、意外な国が非公式世界王者の座についている。ブラジルだ。ニッポンとか北朝鮮とか、(フットボール的に)辺境の地を延々と旅したチャンピオンベルトが、王国に帰っていたのである。
●ニッポン以降の旅路はこうなっている。ニッポン→北朝鮮→スウェーデン→アルゼンチン→ウルグアイ→コスタリカ(ここからW杯ブラジル大会)→オランダ→アルゼンチン→ドイツ(ここまでW杯)→アルゼンチン→ブラジル(今ここ)。昨秋、シンガポールでニッポンはブラジルと親善試合を戦ったが、実はあの試合は非公式世界王者タイトル奪還を賭けた大一番でもあったのだ。
●アルゼンチンの出入りの激しさも味わい深い。わざわざ非公式王者と試合をしているんじゃないかというくらいタイトルマッチが多い(そんなわけないけど)。「王者を倒したら王者」という、このうえもなく明快なルール。FIFAランキングよりよっぽどエキサイティングなんじゃないだろうか。
March 18, 2015