●20日夜は杉並公会堂小ホールで低音デュオ第7回演奏会へ。松平敬(バリトン)+橋本晋哉(チューバ/セルパン)というずっと気になっていたユニットをようやく聴くことができた。神長貞行「デジタル・ボックス1」、河添達也「異考共生の断章II~カンツォーナ2015」(委嘱初演)、川島素晴「Das Lachenmann III」(新ヴァージョン委嘱初演)、近藤譲「花橘 3つの対位法的な歌と2つの間奏」、湯浅譲二「ジョルジョ・デ・キリコ」(委嘱初演)、湯浅譲二「天気予報所見」。これら現代作品のほかに、ギヨーム・ド・マショーら中世・ルネサンス期の作品もさしはさまれ、セルパン(ヘビみたいな形状のあの楽器:写真)のまろやかな音色もたっぷり堪能。
●開演前のアナウンスが人工音声で妙に味わいがあって、この時点からおかしかったのだが、本編も笑いやナンセンスの要素が豊富で、前のめりになって楽しんだ。川島素晴「Das Lachenmann III」は作曲家ラッヘンマンの名に「笑う人 Lachen mann」をかけていて、声によるさまざまな笑いをチューバが模倣するという趣向。舞台上の二人の真剣な名演(名演技というか)が効いて、場内は大ウケ。湯浅譲二「天気予報所見」はもともとはバリトンとトランペットのための作品で、これをバリトンとチューバで演奏したことがきっかけで低音デュオが結成されたとか。天気予報のテキストに対して内容と無関係な感情表現が付与される。聴きごたえがあったのは湯浅譲二「ジョルジョ・デ・キリコ」。キリコの絵画そのものが題材となっているわけではなく、「ジョルジョ・デ・キリコ」というポール・エリュアールの詩が用いられているのだが、そうはいってもキリコと言われたらキリコの絵を思い浮かべるしかないわけで、おまけに低音デュオといいながら歌もチューバも高音頻出で、この針の振り切れた感が彩度マックスのキリコの超現実感と呼応する。アンコールにパラレリウスの「花咲き乱れ」。楽しすぎる。
●8月にはコジマ録音から低音デュオのファーストアルバムがリリースされるそう。
March 24, 2015