amazon
April 10, 2015

ソイレント

ソイレント●最近、気になったニュースといえば、「ソイレントが大人気、生産を50倍に」。ソイレントというのは「生きるのに必要な栄養がすべて含まれている」という代替食品で、粉末を水に溶かして飲むと、それで十分な栄養とカロリーが摂取できる未来の食品だ。いや、未来じゃないか、もう販売しているんだし。食品と言えるかどうかもわからないけど。開発・販売元は2,000万ドルを調達して、生産を拡大したという。
●発想としてはよくわかる。世の中には「あの食品は危ない」みたいに市販の食品や農産物に強い不信感を抱いている人や、「(体質的にあるいは主義として)食べられないものが多い」という人も少なくない。だったら完璧に健康的な代替食品を作って、それ以外は一切口にしないという考え方もあるかもしれない。食べること自体が不健康という先鋭な考え方がありうる。あるいは、単に忙しいから(またはメンドくさいから)、生活から食事を省略したいという需要もあるはず。脱・食事。人生から食事を追放しよう!みたいな。1食3ドルのコストが量産化によってさらに下がれば、増え続ける人口が引き起こす食糧問題への解決策になる可能性だってある。
●でもまあ、フツーの人はそんなものはご免だろう。食べる楽しみをなくしてしまうなんて。人生が文字通り味気ないものになりそうだ。でも待てよ。夕食は楽しく食事したいとしても、仕事の合間のランチタイムに特にうまくもないものを短時間でかっこむくらいだったら、ソイレントでさくっと済ませて、その分の空いた時間を自分のために使うという考え方だってあるんじゃないだろか……いやあ、でもそれはなあ。
●ソイレントという名前がいい。人口爆発による悪夢的未来を描いた映画「ソイレント・グリーン」のソイレントに由来するっぽい(厳密にはハーラン・エリスンの原作小説「人間がいっぱい」のほうだろうか)。いかにもイヤ~な感じの食品にイヤ~な感じの名前を付けるというセンス。嫌いじゃない。