●先日当欄でご紹介した、「サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか」(クリス・アンダーゼン、デイビッド・サリー著/辰巳出版)について、もう一点。チームを強くするためには、チーム内の最良の選手の質を上げるべきか、最低の選手の質を上げるべきか、という問題が統計的に分析されている。もしあなたが今後サッカー・チームの監督を務めることがあったら、大いに役立つかもしれない。
●著者は、プレイの質を算出する評価法であるカストロール・ランキング用いて、最良の選手と最低の選手の両方がチームの得失点差と勝点にどんな影響があるかを欧州各国のクラブについて調べた。すると、もちろん、両方とも正の相関があった。つまり、チーム最高の選手の質が高ければチームの成績は上がるし、チーム最低の選手の質が高くてもやはりチームの成績は上がる。
●しかし、最高の選手の質と、最低の選手の質と、どちらがよりチーム成績に強く影響を及ぼしているのか。これを回帰分析を用いて検討したところ、より重要なのは最低の選手の質のほうであることがわかったという。ざっくりいえば、最良の選手の質を10%向上させると、チームは一シーズンで(全38試合として)勝点5を獲得する。5ポイントもあれば、優勝するかどうか、降格するかどうか、結果が変わってくる。しかし、最低の選手の質を10%向上させた場合の影響はさらに大きく、一シーズンで勝点9も得ることができる。断然、こちらのほうがいい(しかも安上がりだ)。
●つまり、チームの強化のためには、多くの場合、主力選手を入れ替えるよりも、そのチームでいちばん弱いポジションを強化したほうがずっと効率的ということになる。最低の選手を入れ替えるために、その選手よりいくらかすぐれた選手(チーム内では並の目立たない選手かもしれないが)を獲得するという一見地味な人事がチームに躍進をもたらすわけだ。
●もっとも、最低の選手が若くて未熟なプレーヤーという場合もよくあるだろう。経験の少ない選手は試合を通して大きく成長するということが十分ありうるので、並の選手と入れ替えるくらいならガマンして使って成長を促したほうが、最終的なチームの勝点に貢献するかもしれない。
April 22, 2015