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2015年6月アーカイブ

June 30, 2015

岡崎慎司がレスターに移籍

●この時期、欧州フットボール界の楽しみといえば移籍情報。もしかするとシーズン中よりワクワクするかも。マインツの岡崎慎司がプレミアリーグのレスター・シティに移籍することが決まった。これは朗報。関係者全部にとってハッピーな移籍なのでは。
●まず、岡崎自身はイングランドのプレミアリーグへの移籍に成功した。EU圏外の選手にとっていちばん狭き門なのがイングランド。労働許可証の獲得のためには代表でコンスタントに出場し続ける実績が必要なのだが、岡崎なら問題ないはず。29歳のストライカーが4年契約を獲得したというのも立派すぎる。今季プレミアに昇格したレスターは14位で見事残留に成功した。下位には違いないが、シーズンを通しての得失点差がマイナス一桁(-9点)で収まっていて、15位以下のチームとは勝点以上に内容で引き離していた模様。
●マインツは文句なしの大成功だろう。シュトゥットガルトでもうひとつだった岡崎を200万ユーロほどで買って、センターフォワードの位置で起用して2シーズンにわたって二桁得点を獲らせて、契約があと残り1年となったところで1100万ユーロでレスターに売却できた。もし今季売れなければ来季契約が切れてタダで選手を失ってしまうし、契約切れを防ぐために新たに契約更新しても来季10ゴール以上を奪えなかったら「30歳の衰えつつある選手」とみなされてしまう。どう考えても今が最善かつ最後の売り時だったはず。
●しかも今回の移籍ではシュトゥットガルトにも150万ユーロ程度の移籍金が入るのだとか。これはよくあるオプションだと思うが、シュトゥットガルトからマインツに売った際に、マインツから次のクラブにステップアップした際に移籍金が発生した場合、その一部をシュトゥットガルトに支払うという条項が入っていたようだ。
●で、サッカー・ファンとして嬉しいのは、プレミアリーグならNHK-BSでの中継もたくさんあるし、チェルシーとかマンUとかシティとかアーセナルを相手にして活躍する(かもしれない)岡崎を見られるっていうことだろうか。試合に出場するっていうのが大前提だが、来季はまさかのレスター中心にプレミアを見ることになるのかも。

June 29, 2015

自己言及キラキラネーム

●きらちゃん
●ぴかちゃん
●星空ちゃん
●ライトちゃん
●キラリナちゃん

June 26, 2015

ギルバート・キャプランと「復活」

●ギルバート・キャプランの名前は、マーラーの交響曲第2番「復活」専門の指揮者として知られている。もともとは経済誌の編集長だったが、「復活」に魅せられて指揮を猛勉強して、1987年にロンドン交響楽団を指揮してCDを録音するにまで至った。そのときのレーベルはCONIFERだったと思う。で、その後も「復活」専門の指揮者として各地で活動し、なんと2002年にはウィーン・フィルとのレコーディングまで実現してしまった。最近では、ウィーン室内管弦楽団を指揮して、「復活」室内オーケストラ版まで録音している。
●最初のCDが出た頃、自費でホールを借りたりオーケストラや合唱を雇ったりして「復活」を指揮した酔狂な男がいるという話が日本にも伝わってきて(うろ覚えだけど、プロモーションで来日したんじゃなかったっけ?)、ある音楽誌の編集長が「経済誌の編集長はずいぶん儲かるんだなあ」と感想を漏らした。うーむ、いくらなんでも雑誌の編集でそんなに稼げるわけないよなあと、自分も釈然としなかったんだけど、ずっと後になって知ったことによると、彼はその経済誌の創業者で、87年に会社を7,200万ドルで売却して、その後しばらく編集長に留まっていた、ということらしい。なるほど、それだけの資産があれば、オーケストラを雇うくらいなんということもないか。当時、日本はバブル期の絶頂だったが、それでも自分で創業した会社の株式を売却して大金持ちになるというのは、一般人の発想になかったと思う(そういうノリはITバブル以降かと)。
●ちなみにかつてキャプランが創設した institutional investor は、今でも健在のようだ。

June 25, 2015

続・ノートPC起動しない事件

●先日起きた「ノートPC起動しない事件」。不屈の闘志で乗り切ったつもりであった。だが、なんということであろうか。使用中に、ふとコーヒーでも入れようかと席を立ち、それから戻ってみると真っ黒な画面にメッセージが一言だけ。

Operating System Not Found

この画面は見たくなかった●うぬぬ。なんという、つれなさ。電源を切って、再起動させようとしたが、画面には同じメッセ―が出るのみ。がくりと膝をつく。あの20時間にもわたる修復オプション付きチェックディスクを乗り越えた苦労はなんだったのであろうか。そして、初期状態にリカバリーしてから猛然とデータをコピーし、アプリケーションをインストールしたすべての労力がムダだったとは。
●一応、レスキューモードを立ち上げてみたが、ここから同じ道をもう一度たどるのは意味がない。観念した。VAIOの修理窓口に電話して、引取修理をお願いすることに。電話の前に、必要と思われる書類などを一通り確認する。で、そこではっと思い出したのだが、購入時に標準の1年保証ではなく、3年の長期保証を付けているではないの。てっきり保証期間などとっくに終わっていると思っていたら、まだ期間内だった。え、じゃあ、最初からすぐに修理に出してもよかったんじゃないの?
●PCのトラブルは3年目から。そう読んでいた購入時の自分はなかなかの慧眼である。それにひきかえ、その事実を完全に忘却していた今の自分のとんちきぶりと来たら!
●それにしてもあの一からの環境構築をもう一回やらなければいけないかと思うと泣ける。

June 24, 2015

キリル・ペトレンコの録音

●はっ。スーパーに買い物に来たら、納豆が全部売り切れ!とか。あるいはサバ缶がどこにもないっ!とか。そういう本来潤沢に供給されているはずのものが、一時的に需給のバランスが崩れてさっぱり手に入らなくなることってあるじゃないすか。待ってれば確実に手に入るのに、欲しいと思ったそのときにないというフラストレーション。
●デジタルだとそういうことが起きないのがいい。欲しいと思った人は全員買えるし、作る側も売り時を逃さずに売れる。ベルリン・フィル次期首席指揮者として一般紙にも名前が載って、突如として脚光を浴びたキリル・ペトレンコ。これまでの録音は本当に少ないのだが、現在データで購入可能なのが以下の録音。

Amazon デジタル・ミュージック:Kirill Petrenko

●これがまたスークの交響詩「人生の実り」(ベルリン・コーミッシェ・オーパー管弦楽団)とか、プフィッツナーのオペラ「パレストリーナ」(フランクフルト歌劇場管弦楽団)とか、ベルリン・フィルのシェフになる人にしてはずいぶん渋い。今、かつてないほど勢いよく、スークの交響詩とプフィッツナーの「パレストリーナ」がダウンロードされている予感。轟轟と音を立てて流れるビット・ストリーム。
●ベルリン・フィルのDCHに収録しているエルガーの交響曲第2番や、スクリャービンの「法悦の詩」を単体で売ろうという話は出てくるのだろうか。それともすでにDCHがあるんだから必要ない? あるいはハイレゾ?

June 23, 2015

ベルリン・フィルの次期シェフはキリル・ペトレンコに決定!

●昨日の「ノートPC起動しない事件勃発」で膨大な時間がとられて、あたふたとしている月曜日、急遽、ベルリン・フィルが記者会見を行うという報せを受け取った。会見は日本時間で20時からで、会見の様子はデジタル・コンサートホール(DCH)で生中継されるというではないか。幸い、他の予定とはぶつかっていなかったので、20時にPCの前に。まあ、家で見られるんだから、ありがたい。
●直前にベルリン・フィルの次期首席指揮者がキリル・ペトレンコに決まったといったウワサがちらちらと目に入ってきていたので、「会見がある」という時点で話の内容は察しがついた。しかし、実際にキリル・ペトレンコの名前が挙がってみると、やはり驚く。たしかに候補者陣の一角には挙げられていたかもしれないが、なにせベルリン・フィルとの共演はこれまでにたぶん3回のみ。2006年、09年、12年の定期演奏会。しかも4回目となるはずだった昨年12月の定期公演をキャンセルしてしまった(代役はハーディングでマーラーの6番)。ネルソンスが本命かなと思っていたが、すっかり意表を突かれてしまった。アバドが選ばれたときも予想外の結果だったというが、今回はそれ以上では。公式サイトでの発表はこちら。会見は質疑応答も含めて20分強であっさりしたもの(本人がいないし)。最初はドイツ語と英語が併用されていたが、質疑応答からはドイツ語のみ。
キリル・ペトレンコは1972年、ロシア生まれ。18歳の年にオーストリアに移り、ウィーン音楽大学で学んでいる。ベルリン・コーミッシェ・オーパー音楽監督他を歴任し、現在はバイエルン国立歌劇場の音楽総監督。まちがいなく活躍しているが、なにしろ日本では聴く機会がないし、録音もほとんどないのでなじみが薄いのはしょうがない。DCHにアーカイブがある2公演を頼りにするしかない。もうひとりのペトレンコ、ヴァシリー・ペトレンコのほうがよく知られているんじゃないだろうか(両者に血縁関係はない)。
●一昔前だったら、ベルリン・フィルのシェフならCDのセールスも期待されたものだが、今やそんなことはだれも気にしていないだろう。結果的に有力候補のなかではメジャーレーベルからいちばん遠い人が選ばれた感。自主レーベルの未来についてはなんともいえないが、就任する頃にはすっかり主戦場はDCHのような配信サービスに移っていると思う。
●コンクラーベが決着して、とりあえず、よかった。歓迎。ティーレマン、ネルソンス、ドゥダメルだったら、それぞれにすでにいろんな印象が固まっていて、ああだこうだと内心で余計な思いが渦巻くわけだが(笑)、ペトレンコなら期待感しかない。だって、聴いてないわけだし。

June 22, 2015

ノートPC起動しない事件勃発

●なにひとつトラブルなどなさそうに見えて、あるとき突然動かなくなるのがPC。ノートPCの電源を入れたら、起動してくれない。電源は入るのだが、Windowsに復帰する途中で止まってしまう。なんどか再起動させてみるが、起動中のどこかのタイミングで止まって、うんともすんとも言わなくなる。うーん、これは困った。SONYのVAIOで、OSはWindows8.1、ドライブはSSD。まだ比較的新しいマシンなのに。ディスクアクセスのランプがほぼ消えてしまって、前に進まなくなるといったふうなので、ドライブの異常である可能性が高そうな予感。
●で、結論から言うと、ドライブをリカバリーして初期状態に戻すという「最後の手段」を敢行し、環境を一からセットアップしたのだが、いまだに完全に回復しているのかどうか定かではない。以下、その顛末記。
トラブルシューティング●まず、最初の段階としては、直前に行ったWindwos Updateがよくなかったのではないかという根拠の薄い希望的観測に基づいて、「システムの復元」を試みた。Windowsが起動しないので、USBメモリのリカバリーメディアから起動するなどしてなんらかの方法で「トラブルシューティング」にたどり着かなければなにもできない。VAIOの場合はリカバリーメディアがなくともASSISTボタンを押せば、レスキューモードがスタートするというので、購入以来初めてこのボタンを押す。
●で、「トラブルシューティング」画面から「システムの復元」を選び、一段階前の復元ポイントを選び、淡い期待とともに復旧を待つ。が、「システムの復元」が完了してくれず、止まってしまう。もう一度、ASSISTボタンからやり直し、今度は三段階前くらいの復元ポイントを選んでみる。あ、「システムの復元」が完了したではないか! と思ったが、そこから再起動せずに固まってしまった。まあ、ダメだよなあ……。
●次に試すのは、セーフモードでの起動。Windowsユーザーにとってはトラブル時の基本中の基本で、古来より電源ボタンとともにファンクションキーを連打してきたわけだが、Windows8以降、あの連打の儀式はなくなったそうで、これもやはり上記「トラブルシューティング」画面からメニューをたどって「スタートアップ設定」から、セーフモードの起動を選ぶ。が、起動してくれない。通常起動とまったく同じ現象で、途中でディスクアクセスランプが消えてしまう。
●この段階でかなり悲観的な気分になり、思わず修理依頼書などを眺めて諸条件を確認しかけてしまっているのだが、まだやることはある。ドライブの異常だとするとチェックディスクでなんとかなるかもしれない。まずは異常があるかどうかを確かめよう。レスキューモードのなかに「VAIO ハードウェア診断ツール」があるのを見つけて、これでSSDを診断すると、問題が発見されたと言われる。次に修復オプションをオンにしてもう一度診断する(やっていることはchkdsk /rなんだろう)。これは相当に時間がかかるはずと覚悟していたが、スタートしてから10時間くらい待っても、数%のところで止まったまま、先に進んでくれない。そんなもの10時間も待つなよと思われるかもしれないが、それくらいは予想の範囲内だ。で、10時間待ったうえに、さらに待つことにして、一晩寝た(笑)。朝、起きてみると、なんと、ちゃんと先に進んでいる! 結局、20時間くらいかかって、最後まで終了したんである。これには少し感動した。待った甲斐があったじゃないか。で、画面上のメッセージを見たら「修復できませんでした」といたく簡潔なメッセージが表示されていた。あのね。MS-DOS時代の「コマンドまたはファイル名が違います」をほうふつとさせるような、この木で鼻をくくったようなメッセージこそ、マイクロソフト・ユーザーの醍醐味!
●ここまですべて徒労。腹をくくった。もうこれは最後の手段。購入時のまっさらの状態に戻すリカバリーしかない。まさかそんな乱暴な手段を使わなければならないとは。またまた「トラブルシューティング」画面(なんどこの画面を見たのやら)から「リカバリー」を選択。SSD中のリカバリー領域まで壊れている可能性もあったが、これはきちんと動作してくれた。PCはすんなりと起動して、Windwos8のセットアップが始まった。そうだ、購入後にWindows8.1にアップデートしたが、本来このマシンはWindwos8が入っていたのだった。
●とにかくまたマシンが動いてくれたことには安堵したが、そこからWindows Update無双が始まった。もう果てしなく続く。Windows8の何百個のアップデイトを完了した後で、今度はWindows8.1へのアップデイトが待っている。それと同時に、自分の環境を復元しなければいけない。膨大なデータを母艦のデスクトップからコピーし、アプリケーションをインストールしまくる。
●で、ここまでやって、ふと問題が何も解決していない可能性に思い至る。SSDに問題があると診断されていたわけだが、このリカバリーした状態でもう一度診断してみたらどうなるのだろう。マシンは無事起動しているが、リカバリーの際に問題が解決しているとは限らない。恐る恐るSSDを診断すると、案の定、問題が見つかったといわれてしまった。そこで、また20時間かかるかもしれないが、修復オプションをオンにしてもう一度診断してみた。すると、今度はほんの2時間くらいでチェックが終わった。そして、メッセージ。「修復できませんでした」。ああああああ……。
●さて、どうしようか。マシンは無事に動いている。しかし問題は本質的な解決に至っていないように見える。とはいえ、選択肢などないではないか。なにも考えずに、せっせと環境を整えた。これもまた大仕事なわけだが、それでも一昔前に比べると、ずいぶん一からの環境構築は楽になったと思う。なにせ、まずDropboxをインストールすればどんどんクラウド経由でデータが入ってくるし、細々としたツールやら設定ファイルなどもそこに入れてあったので、おもいのほかスムーズだ。いや、こんな災難な目にあっておいて、スムーズもへったくれもないわけだが。
●そんなわけで、今日のエントリーは、この復活したノートPCから更新してみた。いつまたトラブルが発生するかわからないというドキドキ感を抱えながら。

June 19, 2015

尾高忠明&N響のラフマニノフ

●18日は尾高忠明指揮N響へ(サントリーホール)。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(小山実稚恵)とラフマニノフの交響曲第1番というロシア音楽プロ。同じ「第1番」でも前者は初演前に酷評されながらも生前に高い人気を獲得した作品、後者はグラズノフ指揮による有名な初演の大失敗により封印されてしまった作品。消えたラフマニノフの交響曲第1番は、作曲者の死後に発見されたパート譜から復元されたのだとか。生で聴くのはたぶん、初めて。録音でもいつ聴いたのか記憶がないくらいなので、すごく新鮮な気分で向き合えた。オーケストラは気合十分、重低音がすごい。
●で、聴いてみると、期待以上のおもしろさ。粗削りではあるけど、ラフマニノフの管弦楽曲のルーツはここにあるんだなと実感できる。この曲が交響曲第2番、第3番へつながっているというよりは、むしろ晩年の交響的舞曲につながっている。「怒りの日」の引用も共通するし、終楽章の祝祭性も交響的舞曲をほうふつとさせるし、銅鑼が臆面もなく鳴り響く感じとかも似てる。しかも第1楽章の主題が交響的舞曲の第1楽章で引用される。最初の管弦楽曲でやりたかったことが、最後の管弦楽曲でより成熟した筆によって再現されているといった印象。
●で、今月のN響はアンドリス・ポーガ指揮のCプロでその交響的舞曲が演奏されていて、意図的にそうなっているとしか思えないのだが、同一月の異なる指揮者の公演でプログラムに関連を持たせるなんていうことができるものなんだろうか。

June 18, 2015

「フィガロの結婚」 ~庭師は見た!~ 野田秀樹演出

●全国10都市13公演開催される野田秀樹演出、井上道義指揮によるモーツァルト「フィガロの結婚」。17日、ミューザ川崎の公演へ。オケは東響(公演ごとに異なる)。単に読み替え演出という以上に、オペラ上演のあり方について問い直すような新しい演出だった。舞台は長崎。黒船でやってきたのが伯爵と伯爵夫人、ケルビーノ(ズボン役ではなくなっていた。カウンターテナーが歌う)。この3人の歌手が西洋人で、お屋敷で仕えるのが日本人であるフィガ郎(フィガロ)やスザ女(スザンナ)、マルチェ里奈(マルチェリーナ)、バルト郎(ドン・バルトロ)ら。で、日本人同士は日本語で会話するばかりか、日本語で歌う。西洋人は原語のイタリア語で歌う。日本人歌手たちは日本人を相手にするときは日本語で歌い、西洋人相手に歌うときはイタリア語で歌うという離れ技を見せた。なるほど、筋は通っている。
●なぜ日本人がイタリア語で歌うのかというオペラの根源的な疑問への答えになっているばかりか、黒船到来時代の西洋人と日本人を描くことによって、本来台本が持っているはずの社会階級への批評性もあぶりだされる。さらに端役の庭師アントニ男を狂言回しにしたことで、物語がすっきりと明快になった。もともとこのオペラは(前にも書いたように)「進むにつれて話はグダグダ、でも音楽だけは神」という奇跡の名作だと思っていたけど、この演出ならたぶん初見でもちゃんとストーリーが理解できる。省略されている部分や伝わらない部分を、庭師アントニ男が手際よく説明してくれるので。ほかにも演出は細部に至るまでアイディアが豊富で、平凡な演出だと間がもたずに、オペラ的演技のオートマティズムで埋め尽くされるような場面であっても、さまざまに趣向が凝らされている。コンサートホールで上演するという制約も、制約と感じさせない。並の公演とはかけている手数もぜんぜん違うというか。
●なので「進むにつれて話はグダグダ」なオペラではなくなったし、「でも音楽だけは神」というオペラでもなくなった。で、じゃあストンと腑に落ちたかというとそうでもなくて、「これが正解ルートであるはず」という確信と「なんだかモーツァルトの音楽が背景に引っこんじゃったな」という当惑が入りまじっている。自分のなかで消化するためには、もう一呼吸おく必要があるのかも。

June 17, 2015

ニッポンvsシンガポール@ワールドカップ2次予選、初戦

シンガポール●頭を抱えるしか。内心、久々に8対0くらいの大量得点が見られるんじゃないかと思っていた対シンガポール戦。ニッポンはベストメンバーで臨んで、0対0のドロー。まさか、まさかの勝点1。試合終了後、思わず2次予選のグループ分けや勝ち抜け条件を確認してしまった。2次予選なんて寝てても勝ち抜けると思っていたのに。寝ていては勝ち抜けないことがわかった。
●ニッポンのメンバーは先の親善試合でのイラク戦から、左サイドバックの長友を太田に変更した布陣。GK:川島-DF:酒井宏樹、吉田、槙野、太田-MF:柴崎(→原口)、長谷部-香川(→大迫)-FW:宇佐美(→武藤)、岡崎、本田。ほぼすべての時間帯でニッポンが一方的に攻めていた。次々とシュートを放ち、枠もそこそことらえていたはずだが、シンガポールのキーパーがファインセーブを連発。
●試合終了後のインタビューで、ハリルホジッチ監督は「私のサッカー人生でこのようなシチュエーションに陥ったことがない」と語っていた。が、ニッポンのサポーターにとっては、毎度おなじみアジアの戦いの典型的パターンAともいえる(パターンBは暴走する主審)。ザッケローニもジーコもこういう戦いをくりかえしてきた。ただ、多くの場合、ひたすら守るばかりのチームは後半20分過ぎあたりから急速にパフォーマンスを落とし、ニッポンの攻撃に耐えきれずに崩壊したもの。事実、シンガポールの選手たちはふらふらになりながら走っていたと思う。どうして1点も奪えなかったんだろう。
●運にとことん見放されていた、相手を動かしてスペースを作り出すような工夫が欠けていた、個人による強引なプレイが足りなかった、焦りからプレイが雑になってしまった、等々。最高に熱心な監督を迎え、最高のテンションでチームが始動し、最初の公式戦でどうしようもない結果が出た。楽観的にいえば、「この段階で問題が顕在化してくれてよかった」といったところか。放心する本田圭佑の姿にマーライオンが重なる。

June 16, 2015

コパ・アメリカ2015開幕

●アジアにアジア・カップがあり、欧州にユーロがあるように、南米にはコパ・アメリカがある。4年に1度の南米選手権。南米と言いつつも、毎回メキシコも参加しているほか、北中米から招待国が参加することもあるし、過去にはニッポンも招かれたことがあるという謎大会。
チリの地理●で、今回のホスト国はチリ。南米のなかでもひときわ魅力にあふれたサッカーを見せてくれるということで大いに期待しているのだが、大会概要でスタジアムの所在地などを目にして、そのあまりの国土の「長さ」にくらくらした。わかっちゃいるけど、チリ単体の地図だと、こんなにひょろっと長くなるとは。細長い。東西方向には徒歩で移動できるんじゃないかと思うほど、細長い。むしろ、この国の北端と南端に一つずつゴールマウスを置いて、チリ全土をフィールドにした試合をしたほうが盛りあがるのではないか。
●んなわけない。アルゼンチンvsパラグアイの録画を見たが、テベスやイグアインをベンチに置く豪華すぎるアルゼンチン代表が、2点のリードを守り切れずにパラグアイに追いつかれてドロー。メッシ、アグエロ、ディ・マリアの豪華3トップは華麗だったが、スーパープレイを見せてもどこか哀愁が漂うのが代表でのメッシ。

June 15, 2015

ミロ・クァルテットのベートーヴェン・サイクル、ポーガ&N響

●11日はサントリーホール・ブルーローズでミロ・クァルテットのベートーヴェン・サイクルII。毎年恒例となったサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンのベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲シリーズの一夜で、曲目はラズモフスキー四重奏曲の3曲。切れ味鋭く、エネルギッシュ、鮮度と明度を最大限に振って、隅から隅まで光が当てられたような輝かしさ。すごい、クァルテットってこんな鮮烈な音が出せるんだ、的な感動あり。並のクァルテットを聴くのが嫌になるくらいの憂鬱をもたらしてくれた。本当は後期作品も聴きたかったけど、日程の都合で今年はこの一日のみ。惜しすぎる。
●12日はアンドリス・ポーガ指揮N響へ(NHKホール)。ソリストにホルンのバボラーク。モーツァルトのホルン協奏曲第1番(レヴィン補筆完成版)とR・シュトラウスのホルン協奏曲第1番の2曲を吹いてくれるのがうれしい。モーツァルトのホルン協奏曲第1番は、いつのまにか作曲家最期の年に書かれた未完の作品だということが定説になっていて、K.412というケッヘル番号のみならず、K6386bというケッヘル目録第6版の番号も実態にそぐわなくなっている。いつか大改訂して600番台の番号が添えられるんだろうか。それにしても、この期に及んでモーツァルトはなぜ60歳近くになったロイトゲープのためにホルン協奏曲を書こうと考えたんだろう。この時期、すさまじい量の仕事を抱えていたはずだが……。
●バボラークのソロは今回もほれぼれとするほど滑らか、まろやか。あまりに余裕綽々で、憎らしいほど。前回だったか、長大なグリエールのホルン協奏曲を聴いたときのような強烈さはないにせよ。後半はラフマニノフの交響的舞曲。痛快。最後はフライング拍手が出たが気持ちはわかる、というかそういう曲だと思う。

June 12, 2015

ニッポンvsイラク代表@キリンチャレンジカップ2015

ニッポン!●来週火曜日にW杯予選の対シンガポール戦を控えて、イラク代表との親善試合。週末じゃなくて平日なんすよね。なので、本番までは中四日ある。きっとこのイラク戦でのスタメンがそのままシンガポール戦でも起用されるんだろう。ハリルホジッチ監督が選んだメンバーは攻撃的なチョイス。GK:川島-DF:酒井宏樹、吉田、槙野、長友-MF:柴崎(→山口)、長谷部(→谷口彰悟)-香川(→原口)-FW:宇佐美(→武藤)、岡崎(→大迫)、本田(→永井謙佑)。
●相手のイラク代表が平均23歳ほどの若いチームということもあって、序盤からニッポンが相手を圧倒した。縦に速い攻撃への意識がさっそく前半5分に実を結んで、中盤でボールを奪うと柴崎が本田へのスルーパス。本田がしっかりとゴール隅にボールを蹴って先制ゴール。さらに9分、香川のコーナーキックでイラクがファーサイドの槙野をフリーにしてしまい、追加点。序盤からハイテンションのサッカーで相手を押し込むスタイルはアギーレ体制でも感じられたが、わずか9分で2ゴールを奪ってしまった。32分には宇佐美が得意のドリブルから岡崎にパスを渡して、これを蹴りこんで3対0。一方的なペースに。
●後半は試合のペースが落ちて、特に後半21分に香川、本田、宇佐美の攻撃陣を一気に原口、永井、武藤と3枚代えてからは、イラクもボールを保持できるようになった。それでも後半39分に原口がドリブル突破から代表初ゴールを決めて4対0。完勝。
●結果は文句なしだが、大きくメンバーを変えた後はかなりクォリティが下がってしまったかも。先発では長友がハリルホジッチ体制では初先発。宇佐美が左サイドに張り出した時に連携がもうひとつとも感じたが、個のクォリティの高さはさすが。柴崎はどんどん伸びている感。このポジションは相手が強ければ山口あたりを起用したかもしれない。代表デビューの谷口彰悟はかなり緊張していた様子。所属チームで出番を失っていた川島は、あいかわらず正GKになるのだろうか。
●本番は次のシンガポール戦だが、相手の力はこの日のイラクにも及ばないのでは。近年の公式戦ではあまり見ないような大差がつくかもしれない。

June 11, 2015

「スペードのクイーン」(プーシキン)

スペードのクイーン(プーシキン)●光文社古典新訳文庫から刊行された「スペードのクイーン/ベールキン物語」(プーシキン著/望月哲男訳)を読む。訳題が「スペードの女王」ではなく「スペードのクイーン」。チャイコフスキーがオペラ化している。
●もちろん作品本編も古典中の古典だけあって味わい深いに決まっているのだが(訳文もとても読みやすい)、訳者による50ページほどもある巻末の「読書ガイド」がおもしろい。「スペードのクイーン」でカードゲームの鍵となる「3、7、1」の数列について、ずいぶんいろんな解釈があるのだと知った。倍々ゲームのギャンブルで3回連続して賭けたときの配当、2、4、8から、元金を差し引いた1、3、7(2のn乗マイナス1)に由来するというのが、どう見ても自然だと思うが、そこからいろんな解釈が膨らむというのも理解できる。
●で、問題は「スペードのクイーン」に登場するカードゲーム、ファラオ(=ファロ)だ。ファラオの基本ルールを知らないでこの話を読むのは(廃れたゲームなので普通は知らない)、麻雀のルールを知らずに「ノーマーク爆牌党」とか「スーパーヅガン」を読んでるような(←麻雀マンガの例)隔靴掻痒感がある。訳注を読み、検索もしてみた感じだと、どうやら運だけで勝敗が決着するようなタイプのゲームのようだ。子が1枚カードを選んだ後に、親(胴元)が山から2枚のカードをめくって左右に置く。右のカードと子のカードの数字が一致すれば親の勝ち、左のカードが子のカードと一致すれば子が勝つ。一見、親も子も等しい条件のようだが、左と右のカードが同じ数字だった時は親の取り分が発生するそうで、少なくともこれが胴元の取り分(ハウスエッジ)になるらしい。だったら、子は賭ければ賭けるほど損をすることがわかっているのだから、なんでそんなものをするのかと思うが、たいていのギャンブルはそうなっている。
●この「読書ガイド」によると、ギャンブル好きのプーシキンは、少なくとも35回の大勝負に挑み、負けの総額が80,000ルーブリ、勝ちの総額が7,000ルーブリだったという。とてつもなく負け越している(プーシキンの外務院での9等官としての年俸が5,000ルーブリ)。ここまで大金を失っているとなると、ハウスエッジに負けたという以上に、イカサマも横行していたんじゃないかと想像するのだが、どうなんだろうか。

June 10, 2015

ステファヌ・ドゥネーヴ指揮N響のラヴェル、ルーセル他

●7日はステファヌ・ドゥネーヴ指揮N響へ(NHKホール)。前半にラヴェルの「道化師の朝の歌」とラロのスペイン交響曲(独奏:ルノー・カプソン)、後半にルーセルの交響曲第3番とラヴェルのボレロ。N響とは初共演だが、最初のラヴェルからキレのあるリズムと明るく色彩的な音色をオーケストラから引き出してきた。ラロではカプソンの華麗なソロに盛大なブラボー。巨大空間に響きわたる美音。パワフルで気迫がみなぎるルーセル、精緻で壮麗なボレロと好演が続いて、予想以上に客席の心をつかんでいた。
●トランペット首席奏者関山氏が定年のため定期公演最後の出演ということで、ボレロの後は花束が渡されて派手にガッツポーズ、さらにドゥネーヴが今日の主役はあなただと言わんばかりに関山氏を引っぱり出して、指揮台に立たせた。場内は大喝采。同一プロを2日間開催するN響定期だけど、2日目だとこういう貴重な場面にも出会える。たまたまだけど。

June 9, 2015

ユヴェントスvsバルセロナ@チャンピオンズリーグ2014/15決勝

●欧州のサッカーシーズンもこれで閉幕。今年のチャンピオンズリーグ決勝はユヴェントス 1-3 バルセロナで、バルセロナが制覇した。近年、凋落ぶりが著しいイタリア・セリエAだが、唯一気を吐いているのがユヴェントス。一方バルセロナはルイス・エンリケ監督と選手の確執などが一時騒がれたものの、終わってみれば三冠達成。完璧なシーズンだった。
●バルセロナはメッシ、ネイマール、スアレスの3枚看板の破壊力が強烈(ペドロはずっとスターの陰に隠れ続けている運命なのか……)。中盤もイニエスタ、ブスケツ、ラキティッチで万全。ユベントス相手に62%のボール・ポゼッションはさすが。90分を通してシュート数はそう変わらないが(オン・ターゲットも)、パスの本数は500本対280本でバルセロナが圧倒していた。前半4分に見事な崩しからラキティッチが先制ゴールを奪い、多くの人が予想したような展開になったが、後半10分にモラタ(またも)が同点ゴールを奪うと試合がわからなくなった。バルセロナの守備は決して強固ではない。ただ、同点になってユヴェントスがさらに攻勢を強めると、バルセロナのカウンターが発動しまくって、ルイス・エンリケの注文通りのサッカーになってしまった。後半23分にスアレス、追加タイムの後半52分にネイマールがそれぞれ鮮やかなゴールを決めた。
●シャビはこれでバルセロナからお別れ。カタールへ行く。いつか顕在化すると思っていた「シャビの後継者問題」は、結局顕在化しなかった。
●ルイス・エンリケ監督は大監督になるのだろうか。就任1年目で三冠達成。あるいは、ひょっとして辞めたりして。

June 8, 2015

テミルカーノフ指揮読響のマーラー、ノット指揮東響のシュトラウス&ブルックナー

●週末はオケ公演がたくさん。5日はテミルカーノフ指揮読響へ(サントリーホール)。マーラーの交響曲第3番のみのプログラムで、小山由美(Ms)、女声合唱に新国立劇場合唱団、NHK東京児童合唱団。満喫。ただでさえ長大な作品だが、第1楽章が悠然としたテンポで開始され、自重に耐えきれないような巨大な音楽に。前夜に聴いたヘンゲルブロックのマーラーとはネガポジ反転したようなマーラー。よく鳴り、土臭く、混沌としたエネルギーを感じさせる。統率のとれた児童合唱の存在感がすごい。声の質はもちろんのこと、立ち上がるだけで動きにキレがあって、異質な存在の混入感が半端ではない。終楽章はいつ聴いても落ち着かない音楽。半分感動するけど、もう半分で額面通りに受け取れない疎外感を覚えるというか……。
●6日はジョナサン・ノット&東響(サントリーホール)。R・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」とブルックナーの交響曲第7番。これまでに聴いたこのコンビのなかでは最強の満足度。精緻な「メタモルフォーゼン」の後に続くブルックナーが、前半からひと続きの音楽として機能していたというか。第2楽章の遅いテンポは意外だったけど、前半を受けての葬送の音楽と考えれば納得。ここしばらくブルックナーをとりあげる公演に意識的にたくさん足を運んでいたんだけど、最後にもっとも説得力のある解釈に出会った感。宗教的恍惚感と無縁でありながら、心を揺さぶるにはどうしたらよいか、という非大伽藍系ブルックナーとして。絶美。
●個人的な勝手なイメージとしては、「メタモルフォーゼン」という言葉の意味は第一に「変態」。典型的には、青虫がサナギになり、やがて蝶になるという変態。幼虫の体を形作る各部分が複雑に変化して新たに成虫の羽とか足とか摂食器官が形成されてゆく驚異と、23人の弦楽器奏者がそれぞれ独立したパートを奏でて有機的なアンサンブルを織りなす様子が重ね合わされる。そこに大戦の終結などの時代背景や「エロイカ」引用などふんだんなメタファーを読みとるべきとしても、自分の心のなかでは隠された昆虫名曲。弦楽器もどこか昆虫的だし。

June 5, 2015

トーマス・ヘンゲルブロック指揮北ドイツ放送交響楽団の「巨人」他

●4日はトーマス・ヘンゲルブロック指揮北ドイツ放送交響楽団へ(サントリーホール)。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調(アラベラ・美歩・シュタインバッハー)、マーラーの交響曲第1番ニ長調「巨人」(1893年ハンブルク稿)というプログラム。シュタインバッハーのソロは渋みのある音色で、終楽章の躍動感が見事。アンコールが予想外で、プロコフィエフの無伴奏ヴァイオリン・ソナタから第1楽章。得した気分。
●で、マーラーの「巨人」ハンブルク稿。ハンブルク稿といえば、今年1月に山田和樹&日フィルでも聴いているわけだけど、最終稿との最大の違いは第2楽章に後にカットされた「花の章」が入って、5楽章構成になること。シンメトリックな構成感が生まれると同時に、自然賛歌的な楽想がいっそう際立つ。オーケストレーションにも違いがあるが、おそらくそれ以上にヘンゲルブロックが細部に至るまでさまざまに添えたニュアンスによって、鮮度の高い「巨人」になっていた。ストーリーテリングの巧みさも感じる。この段階では各楽章に標題が残っているので、これもおもしろい。第3楽章(通常の第2楽章)までは第1部「青春の日々より」。第4楽章「座礁!」(カロ風の葬送行進曲)と第5楽章「地獄から」が第2部「人間喜劇」。最終形からするとかなり饒舌。アンコールにワーグナーの「ローエングリン」第3幕への前奏曲。スペクタクルよりも抒情性を感じさせる、まろやかな響き。
●客席は予想以上に盛大にわきあがって、最後はヘンゲルブロックのソロ・カーテンコールに。

June 4, 2015

音楽という<真実>、新垣隆著

音楽という<真実>、新垣隆著●近刊情報。まもなく新垣隆著「音楽という<真実>」(小学館)という一冊が刊行されるのだとか。佐村河内守事件についてはいろんな人がいろんなことを書いているが、なんといっても当事者(の一人)が書くものほど興味深いものはないだろう。
●で、しばらくすると、この本を書いたゴーストライターが登場するという自己言及的な展開を期待。

June 3, 2015

ツエーゲン金沢vsV・ファーレン長崎@J2テレビ中継

●今季のJ2であるが、16節を終えた時点で首位に大宮アルディージャが立っている、のはいいとして、2位がなんとツエーゲン金沢である。今季J3から昇格したばかりの金沢、というかほんの少し前までは(2010年から2013年)JFLで戦っていた金沢、もう少し前までは北信越リーグにいてときどき天皇杯に出場していた、あのツエーゲン金沢。13試合無敗というまさかの快進撃で2位、J2残留が目標だったはずが、このままではJ1に昇格してしまうという勢いである(実はまだJ1のライセンスを取得していないという大問題があるのだが……)。ちなみに現在、すぐ下の3位が磐田、4位が千葉と長崎。セレッソ大阪は9位に沈み、22位最下位に大分トリニータがいる。J2で勝つのも楽じゃない。
●で、ツエーゲン金沢だがスター選手などはいない。なぜこんなに強いのかと思い、前節のツエーゲン金沢対V・ファーレン長崎の試合をテレビ中継で見てみた。かつてのアジアの大砲、高木琢也監督が率いる長崎のチームカラーははっきりしている。J2ながら平均身長180cmを超す大型チームで、高くて強いばかりでなく、走力がある。よく走り、ハードワークする。守備が強い。しかしそれに輪をかけて守備が堅いのが金沢。こちらは大型チームではなく、前線からのプレッシャーを身上としたコレクティブな守備で、相手に質の高いチャンスを作らせないというスタイル。失点しないことが第一。昨季の松本山雅の成功例を思い出すが、セットプレイからの得点が異様に多い。なんとゴールの半分以上がセットプレイから。自陣からのフリーキックでも、ゴール前に放りこむ。
●そんな守備に持ち味のある両チームだけに、キックオフから延々と潰しあいが続く展開に。後半11分、辻尾のフリーキックから作田がゴールを決めて金沢が先制。金沢の枠内シュートはこれが一本目(そしてたぶんこの試合で唯一)。少し興味深かったのは、先制した後、金沢がゴール前に鉄壁を築くのかと思うと、そうではなく、むしろオープンな戦い方になり、ポゼッションも高まったこと。高さでは分が悪いので、これは納得。長崎の能力の高い選手(特にイ・ヨンジェ)に一対一で仕掛けられると、金沢の守備陣は相当に苦しいのだが、それでも最後まで粘り強く守り切って、1対0で勝利した。個の能力では勝てないことを前提に、積極的な守備と練度の高いセットプレイが組み合わされている。監督は森下仁之。
●金沢のセンターバックに、かつての横河武蔵野FCのセントラルミッドフィルダー、太田康介がいた。横河武蔵野がJFLでもっとも強かったころ、中盤で圧倒的な存在感を放っていた選手。この選手はJFLのアマチュアクラブではなく、上のカテゴリーでプレイできるのではないかと思っていたファンは多かったはず。横河武蔵野を出て町田へ移り、1シーズンJ2を経験した後JFLに降格したものの、そこからJ3の金沢へ移り、昇格して晴れてJ2にもどってきた。カテゴリーが上がっても、試合に出続けているのがすごい。遠からずJ1でプレイできれば……と願わずにはいられない。

June 2, 2015

絶賛される演奏会について

●(Twitterのタイムラインを見ながら)
……おっ、評判いいな、×××××指揮の○○オケ。だよなー。タイムラインがすっかり祭りになってるぜ。
この曲って、すごくいい曲だと思うんだけど、なかなかコンサートでとりあげてくれないんだよね。
たぶん、録音で聴くほど演奏効果のあがる曲じゃないからだと思うんだけど、でも×××××指揮の○○オケなら、かなりおもしろく聴かせてくれたんじゃないかな。
だから、この公演は僕もとても気になっていた。
絶対これは聴き逃せないと思ってさあ。
それで、かなり早い段階から注目していたんじゃなかったっけ?
売り切れると思って、チケット早めにゲットしてぇ……。えっ?
な、なんで、オレ、今日ウチにいてタイムラインを眺めてるわけ?
たしか、ここの引き出しにチケットが。(ぞわわわ……)

June 1, 2015

ダウスゴー&都響のサーリアホとニールセン

●29日はサントリーホールでトーマス・ダウスゴー指揮の都響定期へ。前半にサーリアホのクラリネット協奏曲 D'OM LE VRAI SENS(2010)日本初演、後半にニールセンの交響曲第3番「広がりの交響曲」。前日のオペラ「遥かなる愛」に続くサーリアホ祭り。サーリアホ本人によるプレトークもあって、一段と作品が親しみやすく感じられた。クラリネット協奏曲のソロで超絶技巧を披露したのはカリ・クリーク。照明を落として暗闇のなかで曲が開始され、Rブロックの2階あたりから、クラリネットのソロがいななく。中世フランスのタペストリー「貴婦人と一角獣」から触発された作品ということで、クラリネットがユニコーンのようにいななき、演奏しながら客席内を、舞台を移動する。音のみならず、いわれてみればクラリネットの形状もユニコーンの角っぽい? 6つの部分から構成され、前夜の「遥かなる愛」に比べてずっと起伏に富んでいて、ユーモラスで、ケダモノ的で、開放的。最後は舞台上のヴァイオリン奏者たちが立ち上がり、客席に散開する。おもしろい。
●D'OM LE VRAI SENS っていう題が読めない……。みんな困らないんだろうか。あえて日本語にしない理由はプログラムの解説に親切に書かれているのだが、しかし。
●後半、ニールセンの交響曲第3番「広がりの交響曲」は大好きな曲。ニールセンは第4番、第5番も好きだが、第3番はモダン成分少なめで鄙びた楽想が魅力。田園情緒というか、「垢抜けた田舎っぽさ」みたいな二面性があるのがいい。ダウスゴーがインタビューでいっているように、第1楽章冒頭で打撃音風に開始されるのはベートーヴェン「英雄」由来なんだろう(同じ第3番だから?)。全力肯定の終楽章も吉。自分がこの曲に抱くイメージからすると、ややスマートな方向に着地した感もあったけど、痛快。楽しさという点で完璧なプログラムだった。

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