●8日はトッパンホールでアンドレアス・シュタイアーのリサイタル。シューベルトの4つの即興曲D899より第1番ハ短調、4つの即興曲D935より第2番変イ長調、シューマンの幻想小曲集op12、シューベルトの「楽興の時」より第1番~第3番、ブラームスの6つの小品op118。プログラムが非常に魅力的。ブラームスのop118で終わるとは。アンチ・クライマックスのリサイタルとでもいうか。シュタイアーのソロは新潟のLFJ以来。新潟では(たぶん)ホールのピアノを弾いていたが、この日はタカギクラヴィア所有の1887年製ニューヨーク・スタインウェイを使用。ということは演奏される曲目からざっくり半世紀ほど後の楽器ということになるのか……と思ったけど、待てよ、ブラームスは長生きしているから、op118って何年の曲だっけ? うお、1893年。このピアノより新しいじゃないの。マジですか。
●シュタイアーは楽譜を置いてセルフ譜めくり方式なのが吉。才気煥発、融通無碍。前半の終わりと後半の終わりに対をなすように置かれたシューマン「幻想小曲集」とブラームスの「6つの小品」op118をとりわけ満喫。「幻想小曲集」終曲の厳粛さ、壮麗さと、後に残る余韻の対比ってホントにすばらしい。ブラームスのop118-2は少し前の東響公演でエマニュエル・アックスがアンコールで弾いてくれたけど、あの瞑想的なピアノとは対照的に、シュタイアーは速めのテンポでそっけないほどの身振り。でもなんの不足も感じない。
●楽器の響きは多彩。フォルテピアノほど音域ごとに不均一ではないにしても。最初に耳にした瞬間は新鮮に感じるが、聴いているとあっという間に慣れる感も。これが19世紀末の完成形のひとつということなのか。
December 10, 2015