●続いて、中二日で五輪アジア最終予選の第2戦、タイvsニッポン。なんと、手倉森監督は北朝鮮戦から先発メンバーを6人も入れ替えてきた。もともと中二日で試合が続くのでターンオーバーは必至、しかも北朝鮮戦の内容がよくなかっただけにこれは納得の采配。前線のメンバーでいうと鈴木武蔵は残して、浅野拓磨、豊川雄太が先発、南野と久保はベンチスタート。鈴木武蔵にしても後半からはオナイウ阿道と交代。連携面での成熟よりも、コンディション維持を優先した起用法だったが、第一線よりもはるかにスムーズにボールが回り、チームとして機能していた。
●もっともこれはメンバー云々ではなく、相手のプレイスタイルの違いが要因だろう。タイは足元の技術が極めて高く、スピーディで、ボールを細かくつなぎながら攻めてくる。つまり、ニッポンとほぼ同様のフットボール観を持った相手。試合開始早々はタイが中盤を支配して、こんなにも巧くて、しかも速いのかと驚嘆。高さが不足しているのが泣き所で空中戦になると圧倒的にニッポンが有利なのだが、最近の東南アジアのレベルアップを実感する。ただ、皮肉にもお互いがしっかりとかみ合ってサッカーをした結果、ニッポンがつなぐサッカーをできるようになり、組織力とパワーで4対0で完勝。パワープレイ一辺倒の北朝鮮にはあれだけ苦戦するのに、質の高いサッカーを展開するタイには大勝できてしまうというというのが、いかにも。
●前半で退いたが鈴木武蔵の1点目は見事。遠藤航から出た浮き球のスルーパスに、相手と競り合いながら抜け出して、ワントラップしたボールを右足ボレーでゴール右下に叩き込んだ。鈴木武蔵はもうひとつボールが足に付かなくて前線で物足りないことも多いのだが、こんなふうにワンタッチ、ツータッチの勝負になると異次元の身体能力が発揮される。鈴木武蔵と交代したオナイウ阿道は、ナイジェリア系ということなんだが、鈴木武蔵とは違った持ち味がありそう。ぜひ先発でも見たい。あと浅野はこのレベルではプレイの安定度が図抜けている感あり。ゴールは鈴木武蔵、矢島、久保、久保。
●これで勝点6で決勝トーナメントへの通過は決定。あとは順位が1位になるか2位になるか……と思っていたら、他チームの結果が入ってきて、第3戦を待たずしてニッポンの1位通過が決まった。これは幸運。第3戦サウジアラビア戦はコンディションだけを考えて、選手を起用できる。決勝トーナメント一回戦の先発組をどれだけ大胆に温存するか、手倉森監督の手腕に注目するしか。
January 18, 2016