●決勝トーナメントに進出したニッポン、まずは準々決勝として対イラン戦。ここで負ければおしまい、勝てばベスト4へ。五輪出場権は3位まで。つまり勝てば必ずあと2試合は戦えるので、この準々決勝が唯一純然たる「一発勝負」ということになる。選手起用に関して、グループリーグを理想的なローテーションで乗り切った手倉森監督は、この試合で最強布陣を敷くことができる。鈴木武蔵と井手口がコンディション不良で使えなかったが、結果として先発はこうなった。GK:櫛引-DF:亀川、植田、岩波、室屋-MF:遠藤航(→大島)、原川、中島翔哉、矢島慎也(→豊川)-FW:久保(→浅野)、オナイウ阿道。4-4-2。オナイウの起用がかなり意外に感じたが、鈴木武蔵が使えないとなれば、身体能力の高いオナイウを使うということなのか。
●イラン戦はフル代表でも常にこうなるのだが、フィジカルでは完全に劣勢に立たされる。イランの選手たちの体躯は一回りニッポンの選手たちより大きい。高さもあるし、胸板の厚さもスゴい。しかも技術的にすぐれた選手が何人かいる。カウンターにも切れ味があって、深い位置でボールを奪取した後、ダイナミックでワイドな逆襲を展開する。ニッポンはパワーではまったく太刀打ちできない分、技術的な精度の高さと組織の連動性、敏捷性と走力で対抗する。この日もいつもの展開になったが、中盤の要である遠藤航がやや精彩を欠き、2トップにもボールが収まらないとあって苦しい展開に。90分を0対0で終えたが、内容的にはイランが勝っていた。ただ決定機を決めきれなかっただけというか、ニッポンにツキがあったというか。
●ところが延長に入ると次第にニッポンが主導権を握りだす。イランの選手たちが足をつるのに対し、ニッポンは運動量が落ちない。延長前半6分、右サイドで室屋が相手ディフェンスを交わしてクロスを入れると、ゴール前にフリーで飛び込んだ交代出場の豊川がヘディングでシュート、これが先制点になった。
●中盤左サイド、中島のところの攻防は見ごたえがあった。ニッポンのなかでもひときわ小柄な中島は(164cmだとか)、どうしても球際で負けてしまう。それでも猛然とプレスをかけ続け、いったんボールを持って前を向けば足に吸い付くようなドリブルで相手を交わす。自分が監督だったら、競り合いの弱さを見兼ねてきっと後半途中でベンチに下げていたと思うが、手倉森監督は最後まで使い続けた。延長に入るとその中島が大爆発。延長後半4分、左サイドからドリブルで仕掛けてディフェンスを引きはがすとファーサイドに強烈なミドルを叩き込んで2対0、さらにその1分後、同じような形でドリブルで中に切れ込んで、今度はニアサイドに蹴り込んで3対0。あの時間帯、あれだけ走った後で、あのキレた連続ゴール。鳥肌もの。イランからすれば勝つべき試合だったのに、最後は走り負けて総崩れとなったといったゲームか。
●続く準決勝の相手はイラク。中東の難敵が続く。イラクもUAEと延長戦を戦って、延長に入ってから2ゴールを奪うという、ニッポンと似たような展開で勝ち上がってきた。日程上、ニッポンのほうが一日休みが多くなるのだが、今のチームの勢いを保ってこのメンバーで戦うのか、フレッシュな選手を使うのか、手倉森監督の決断に要注目。
January 25, 2016